ヨガが睡眠に効果があるのかどうか、これを調べた研究(システマティック・レビュー)がありますので、紹介致します。
レビューでは、19の研究に参加した1832人の女性を対象にしています。
対象が全員女性と言うことで、男性に同じ事が当てはまるかどうかは分かりません。
厚労省の資料では、ヨガの筋肉に及ぼす効果に男女で差があることや、慢性腰痛に対して女性が男性よりヨガの効果が高そうだという記載があります。
それが理由かどうか分かりませんが、ヨガをやられているのは女性が多いようです。当院通院中でヨガをやられている方も、知っている範囲では全員女性です。男性の方には、太極拳などが多い印象です。
今回の研究の結論を先に言うと、全体としてヨガは睡眠に効果があった。しかし、効果が認められなかった研究もある、有害事象の報告もある、というものです。
ooo
(ヨガについて)
ヨガの主な構成要素は、身体姿勢(アーサナ)、呼吸コントロール(プラナヤマ)、そして瞑想(ディヤーナ)です。
疲労感がとれず、いつも疲れているという乳がんの患者を対象とした研究では、ヨガが安全に疲労、抑うつ気分、睡眠の質を改善したと報告されています。
また、ヨガの重要な構成要素である瞑想(マインドフルネス)は、メラトニンを増加させ、過覚醒を軽減し、ストレスによる呼吸循環系の反応を軽減することで、睡眠障害を改善するとされています。
ooo
(睡眠について)
睡眠の質とは、寝入りの良さ、途中で起きないこと(睡眠維持)、睡眠の長さ(睡眠量)、起床時の爽快感などを総合したもので、睡眠体験の満足度と定義されています。
睡眠の質が良いというのは
◆ 十分な睡眠時間(寝床にいる時間の85%以上の睡眠時間)
◆ 30分以内の入眠
◆ 一晩に1回以下の覚醒で覚醒後は20分以内に眠れる
などです。(全米睡眠財団 NSF)
慢性不眠症では、このような睡眠の質が低下するのが特徴の一つです 。
今回の研究では、睡眠の質を評価するのにピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、不眠重症度質問票(ISI)という主観によるものと、ポリソムノグラフィー(PSG)、アクチグラフィーなどの客観的な測定によるものが用いられています。
PSQIスコア:睡眠の質を測定する。5以上で睡眠の質が悪いことを示す。
ISIスコア:不眠症の重症度を数値化する。8以上で不眠症。
PSGとアクチグラフ:総睡眠時間(TST)、睡眠効率(SE)、 睡眠開始後の覚醒時間(WASO)など、睡眠時間の構成と分布に 関する最も完全で正確な情報を提供する。
ooo
(結果)
①全体として、睡眠の質と不眠症の改善についてのヨガの効果が、主観的な質問票を用いた研究で認められました。
②睡眠質問票(PSQI)を用いた16の研究では、睡眠の質と不眠症に対するヨガの効果が明らかに認められました。
③不眠重症度質問票(ISI)を用いた3つの研究では、不眠症の重症度の軽減にヨガの効果がないことが分かりました。
④アクティグラフを使用した2つの研究では、ヨガには睡眠効率と総睡眠時間の改善効果がないことが明らかになりました。
⑤乳がん患者(治療中患者、治療を終えた患者)では、ヨガが睡眠の質を改善する効果が示されましたが、効果が見られなかった研究もありました。
⑥更年期前後の女性では、ヨガが睡眠の質を改善する効果が示されましたが、効果が見られなかった研究もありました。
ooo
以上まとめますと、
ヨガには睡眠の質を改善する(特に主観的な)効果がありそうです。
ただし、不眠症の重症度を軽くする効果はあまりなさそうです。
ヨガの睡眠に対する効果は、非乳がんの女性、非更年期の女性で、より強く認められるようです。
ooo
(参考)
The effect of yoga on sleep quality and insomnia in women with sleep problems
◆が左にあるほど効果が高い。直線は個々の研究。
②:ヨガによる睡眠の質の改善(PSQIによる調査)
③:ヨガによる不眠重症度の改善(ISIによる調査)
⑤:乳がんを持つ人の睡眠の質の改善(治療中・治療後)
⑤a:乳がんを持つ人の睡眠の質の改善(治療中)
⑤b:乳がんを持つ人の睡眠の質の改善(治療後)
⑥a:更年期前後の人のヨガによる睡眠の質の改善(PSQIによる調査)
⑥b:更年期前後の人のヨガによる不眠重症度の改善(ISIによる調査)