デエビゴに焦点を当てた睡眠薬の有効性に関するシステマティック・レビューとネットワークメタ解析が報告されていますので紹介致します。
(注)ブログの中では分かりやすいように薬剤名を商品名で記載しています。
この研究で調査対象となった睡眠薬は、デエビゴ、ベルソムラ、ベンゾジアゼピン、Z-薬、レスリン、ロゼレムです。
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不眠症治療のガイドライン
レビューの結果を見る前に、ガイドラインでは不眠症に対してどのような治療が推奨されているのか見ておきます。
有名な欧州のガイドラインでは、不眠症治療の第一選択は認知行動療法とされています。 が、、、
実際には認知行動療法で不眠症の治療を受けられる人は限られています。
実施施設も少なく、施設があっても通える余裕のある人が少ない、と言うのが現状です。
また薬物療法について、欧州ガイドラインは次のように記載しています。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬(ベンゾとZ-薬)
ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、不眠症の短期治療に有効である。(4週間以内)
これらのうち、半減期の短いものは翌日午前中の鎮静(ぼーとした感じなど)が少ない可能性がある。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬による長期治療は、一般に推奨されない(強く推奨されない)。
もし毎日使用しているなら、減薬していくことが強く推奨される(強い推奨)。
ベンゾジアゼピンの長期使用は、心理的な依存を促進します。中毒や乱用のリスクが高まりますので注意が必要です。
また特に高齢者では、記憶障害、転倒、骨折、自動車事故などのリスクが一般成人以上に多くみられるので、高齢者のベンゾジアゼピン使用は避けるべきです。
Z-薬についても、高齢者では混乱を引き起こす可能性があるだけでなく、転倒や骨折のリスクを高めるので90日以内の使用が推奨されています。
抗うつ薬
鎮静作用のある抗うつ薬は、不眠症の短期治療に有効である。
鎮静性抗うつ薬による不眠症の長期治療は、一般に推奨されない(強く推奨されない)。
抗うつ薬は一般に抗コリン作用が強く、鎮静作用もあるため、やはり高齢者では転倒リスクを高めます。また起立性低血圧を引き起こすこともありますので、うつや不安のない高齢者では避ける必要があります。
抗ヒスタミン薬
エビデンスが不十分なため、抗ヒスタミン薬は不眠症の治療に推奨されない(強い勧告)。
抗ヒスタミン薬は耐性が早く、抗コリン作用が強い点に注意が必要です 。抗コリン作用のある薬を高齢者が使うと、認知障害や認知機能の低下のリスクが高まります。よって、やはり高齢者では避ける必要があります。
抗精神病薬
十分なエビデンスがなく、その副作用を考慮すると、抗精神病薬は不眠症治療には推奨されない(強く推奨されない)。
メラトニン
メラトニンは有効性が低いため、不眠症の治療には一般に推奨されない。
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以上のように、薬物療法はガイドラインであまり推奨されていないことを念頭に置きつつ、今回のネットワークメタ解析の結果を見てください。
以下に、今回の結果を客観的な測定結果と主観による結果に分けて図表で示します。
今回の睡眠薬ランキングの内容はすべて、参考文献に記載されている結果を表にまとめたものです。すべての睡眠薬を網羅していません。研究で取り上げられた15種類の睡眠薬の有効性を、ネットワークメタ解析で比較したものです。
睡眠ポリグラフ(ポリソムノグラフィ:PSG)で客観的に測定されたランキング
睡眠ポリグラフを用いた客観的な測定結果では、デエビゴが他を圧して優秀な成績を示しました。
主観的評価によるランキング
質問票などによる主観的な評価では、ベンゾジアゼピンやZ-薬の効果が高く、デエビゴやベルソムラ、ロゼレムなどはこれらに劣後しました。
(参考)
Comparative efficacy of lemborexant and other insomnia treatments: a network meta-analysis