侵入記憶

侵入記憶とは、思い出そうとしていないのに、つらい場面が映像、音、におい、身体感覚、強い感情を伴って突然よみがえる体験です。これは強いストレス下で記憶と身体の警報システムが結びついた結果として理解できます。

侵入記憶を理解する上での中心的な問いは、過去の出来事であるはずのトラウマが、なぜ現在の危険のように心身に迫ってくるのか、ということです。さらに、侵入記憶が悪夢、回避、過覚醒、抑うつ的な気分などとどのように結びつくのかを考えます。

 

背景:PTSD とは
PTSD は、事故、暴力、災害、戦争、性被害など、強い恐怖や無力感を伴う体験のあとに起こりうる状態です。トラウマを経験した人が必ずPTSD になるわけではありません。多くの人は周囲の支えや時間の経過とともに回復します。しかし一部の人では、記憶と身体反応がうまく落ち着かず、日常生活に大きな支障が続きます。

侵入記憶とは
侵入記憶とは、自分の意思とは関係なく脳に入り込んでくる記憶です。通常の記憶は、いつどこで起きて、そして今は終わっているという、文脈のパッケージに入っています。しかしトラウマ記憶では、極限の恐怖下で海馬の働きが弱まり、映像・音・身体感覚・恐怖感情だけがバラバラに保存されます。それは脳に焼き付いた感覚の断片であり、文脈のパッケージがこわれた記憶です。そして、侵入記憶として、断片的な映像や身体感覚が脳に突然出現します。本人にとっては、単なる回想ではなく、当時の恐怖や緊張が現在に戻ってくるように感じられます。この特徴が、PTSD を理解するうえで重要です。

2026年7月13日 | カテゴリー : 医療 | 投稿者 : wpmaster