抗うつ薬の話

定期的に案内があって聞かせて頂いている精神科領域の講話のうち、合併症を持つ方などに対する抗うつ薬についての話を、エッセンスのみ紹介致します。


反応性うつ病の治療に、セルトラリンは効果が無かったという話。これは、冠動脈疾患に罹患後、反応性うつ病を発症したケースの調査から明らかになりました。他の原因による反応性うつ病にも当てはまるのかどうかは分かりません。

冠動脈疾患合併うつ病に対しては、エスシタロプラムレクサプロ)の有効性がよく研究されています。エスシタロプラムについては、反応性うつ病に有効なのか効果が無いのかは不明です。そのような視点で行われた研究がないためです。

慢性腎臓病(CKD)の方に対して、セルトラリンは効果が少ないようです。

抗うつ薬とNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の併用には注意が必要です。消化管出血の危険性を少なくするために、NSAIDを常用している場合にはPPI(プロトンポンプ阻害薬)の使用が推奨されます。最も注意が必要とされる抗うつ薬はSSRIです。

不整脈がある場合、三環系抗うつ薬や20mg/日を超えるエスシタロプラムは避けた方が良い。セルトラリンは比較的安全と考えられています。

妊娠可能年齢の女性の場合、SSRIには注意が必要です。SSRIは産後出血、早産、その他の産後合併症のリスク、子の言語障害リスクを増加させる可能性があるからです。しかしこれは、統計処理の問題かもしれません。つまり、そのような合併症を発症する可能性が高い女性がSSRIを使用するためで、SSRIは実際にはそれらの合併症を引き起こしていないという可能性も考えられます。

ただし、妊娠リスクカテゴリー「D」にランクされるパロキセチンは避けるべきでしょう。心房中隔欠損症のリスクが高まります。

高齢者では、低ナトリウム血症と転倒リスクが問題になります。SSRIベンラファキシン三環系抗うつ薬を使用する場合には注意が必要です。

 

(ハーバード大学精神科オッサー准教授)


 

2020年7月23日 | カテゴリー : | 投稿者 : wpmaster