ラミクタール(ラモトリギン)

双極性障害うつ症状の再発予防に効果が高い、ラミクタール(ラモトリギン)を概観します。

 

特徴

ラモトリギンは、双極うつのファーストラインの治療薬であり、体重増加と鎮静がほとんどありません。

これはラモトリギンの2大利点です。(①肥満、およびメタボがない、②認知機能の改善効果が報告されている)

服用している人の主観的評価も、非常に高い薬剤です。

ただし、ラモトリギン単剤で十分コントロールできるのは全体の3分の1といわれます。多くの場合、併用薬を用いることで最良のコントロールがもたらされます。

増強療法として、リチウム追加、非定型抗精神病薬追加(リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなど)があります。

ラモトリギンは、リチウムよりも双極うつの再発予防に有効であるとされています。

ラモトリギンは、外傷性脳損傷や認知症の患者における攻撃性・焦燥感の治療に有用という報告もあります。

ラモトリギンには、躁転のリスクがないと考えられています。

効果発現までの期間

ラモトリギンが効果を発揮するまでの期間は長く、双極性うつの改善には数週間かかることがあります。

さらに、最大の効果発現には、数か月かかる場合があります。

 

投与の量と方法

双極性障害をラモトリギン単剤で治療する場合は、通常1日あたり100~200 mg使用します。

最適な使用量を決めるための漸増は、非常にゆっくりと行います。薬疹リスクを避けるためです。

メーカーにより決められた漸増のスケジュールを、決して早めないようにします。

一旦ラモトリギンを5日以上中断した場合は、再び最初の投与量から漸増します。

ラモトリギン開始3か月以内は、なるべく新しい薬や食べたことのない食品を避けるようにします。(発疹が出た場合の混乱を避けるため)

ウイルス感染症、発疹性疾患、ワクチン接種、の後2週間以内にラモトリギンを開始することは避けます。(発疹が出た場合の混乱を避けるため)

ラモトリギンを中止する場合は、2週間以上かけて漸減します。

 

併用薬について

バルプロ酸と併用する場合は通常の半分の量、カルバマゼピンと併用する場合は通常の2倍の量を使用します。

バルプロ酸服用中の人にラモトリギンを追加投与する場合は、漸増のスピードを半分にし、最大投与量も半分にします。バルプロ酸がラモトリギンの代謝を阻害するからです。

バルプロ酸とラモトリギンを併用している人が、バルプロ酸を中止する場合は、2週間以上かけてラモトリギンを2倍まで漸増します。

カルバマゼピンとラモトリギンを併用している人が、カルバマゼピンを中止する場合は、2週間以上かけてラモトリギンを半減します。

ピル(経口避妊薬)の使用や妊娠はラモトリギンの濃度を下げますので、適切な量の調整が必要です。

 

副作用など

ラモトリギンの最も心配すべき副作用は、まれではあるが致死的になる可能性のあるスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)または中毒性表皮壊死(TEN)です。

これらの副作用は、基本的には、角化細胞のアポトーシスに起因する水疱形成と表皮剥離を特徴とする薬剤誘発性皮膚反応です。

セルトラリンを併用する場合も、皮膚発疹のリスクを考慮して慎重に漸増を行います。

他のほとんどの抗けいれん薬とは逆に、ラモトリギンの副作用は、女性の方が男性よりも起こりやすいと言われます。

ラモトリギンはメラニン含有組織に結合しますので、眼科的なチェックが望ましいとされます。

ラモトリギンによる体重増加は、ほとんどありません。

ラモトリギンによる鎮静は、使用量によりますが、問題にならない程度と言えます。

作用機序と代謝

ラモトリギンは、神経細胞内へのナトリウムの流入をブロックする事で、細胞の興奮を抑制します。
(電位依存性ナトリウムチャンネルのブロック)

ラモトリギンは、グルタミン酸やアスパラギン酸などの興奮性アミノ酸の放出を阻害することが示されています。

ラモトリギンはセロトニン再取り込みにも作用すると考えられていて、それが抗うつ効果に寄与している可能性があります。

 

ラモトリギンの代謝は肝臓でのグルクロン酸抱合で、腎排泄です。CYP450酵素はほとんど関与しません。

 


 

ラモトリギンは、1980年代の早期にウェルカム研究所(イギリス、ケント州ベッケナム)で、合成されたトリアジン誘導体(フェニルトリアジン)です。

「葉酸にはけいれん誘発作用がある」という1960年代の仮説に基づき、葉酸拮抗作用をもつ薬物を開発する過程で見いだされました。

現在は、抗てんかん剤/双極性障害治療剤として使用されています。

 

以下の記載はインタビューフォームなどを参考にしています。

 

名称の由来

商品名のラミクタールは、一般名のラモトリギンに由来します。

Lamictal  Lamotrigine

 

構造式

 

 

 

適応(効能又は効果)

○てんかん患者の下記発作に対する単剤療法
部分発作(二次性全般化発作を含む)
強直間代発作
定型欠神発作
○他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てんかん薬との併用療法
部分発作(二次性全般化発作を含む)
強直間代発作
Lennox-Gastaut 症候群における全般発作
○双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制

 

双極性障害に用いる場合の注意:
双極性障害に関する本剤の効能・効果は「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」であり、双極性障害の気分エピソードの急性期治療に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない

 

用法及び用量

双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に用いる場合(ラミクタール錠 25mg、ラミクタール錠 100mg):
(1)単剤療法の場合
通常、成人にはラモトリギンとして最初の 2 週間は 1 日 25mg を 1 日 1 回経口投与、次の 2 週間は 1日 50mg を 1 日 1 回又は 2 回に分割して経口投与し、5 週目は 1 日 100mg を 1 日 1 回又は 2 回に分割して経口投与する。6 週目以降は維持用量として 1 日 200mg を 1 日 1 回又は 2 回に分割して経口投与する。症状に応じて適宜増減するが、増量は 1 週間以上の間隔をあけて 1 日量として最大 100mgずつ、1 日用量は最大 400mg までとし、いずれも 1 日 1 回又は 2 回に分割して経口投与する。
(2)バルプロ酸ナトリウムを併用する場合
通常、成人にはラモトリギンとして最初の 2 週間は 1 回 25mg を隔日に経口投与、次の 2 週間は 1日 25mg を 1 日 1 回経口投与し、5 週目は 1 日 50mg を 1 日 1 回又は 2 回に分割して経口投与する。6週目以降は維持用量として 1 日 100mg を 1 日 1 回又は 2 回に分割して経口投与する。症状に応じて適宜増減するが、増量は 1 週間以上の間隔をあけて 1 日量として最大 50mg ずつ、1 日用量は最大200mg までとし、いずれも 1 日 1 回又は 2 回に分割して経口投与する。
(3)バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合 :
(3)-i)本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤を併用する場合:
通常、成人にはラモトリギンとして最初の 2 週間は 1 日 50mg を 1 日 1 回経口投与、次の 2 週間は 1 日100mg を 1 日 2 回に分割して経口投与し、5 週目は 1 日 200mg を 1 日 2 回に分割して経口投与する。6 週目は 1 日 300mg を 1 日 2 回に分割して経口投与し、7 週目以降は維持用量として 1 日 300~400mg を 1日 2 回に分割して経口投与する。症状に応じて適宜増減するが、増量は 1 週間以上の間隔をあけて 1 日量として最大 100mg ずつ、1 日用量は最大 400mg までとし、いずれも 1 日 2 回に分割して経口投与する。
(3)-ii)(3)-i)以外の薬剤を併用する場合:
単剤療法の場合に従う。

 

用法・用量に関連する使用上の注意
(1)発疹等の皮膚障害の発現率は、定められた用法・用量を超えて投与した場合に高いことが示されているので、併用する薬剤の組み合わせに留意して、「用法・用量」を遵守すること。

併用する薬剤については以下のとおり分類されるので留意すること。なお、本剤のグルクロン酸抱合に対する影響が明らかでない薬剤による併用療法では、バルプロ酸ナトリウムを併用する場合の用法・用量に従うこと。
1)本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤:フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドン、リファンピシン、ロピナビル・リトナビル配合剤
2)本剤のグルクロン酸抱合に対し影響を及ぼさない薬剤:アリピプラゾール、オランザピン、ゾニサミド、ガバペンチン、シメチジン、トピラマート、プレガバリン、リチウム、レベチラセタム、ペランパネル、ラコサミド

本剤による発疹等の皮膚症状のために投与を中止した場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は再投与しないこと。再投与にあたっては、いかなる理由で投与を中止した患者においても、維持用量より低い用量から漸増すること。なお、投与中止から本剤の消失半減期の 5 倍の期間(バルプロ酸ナトリウムを併用した時は約 350 時間、バルプロ酸ナトリウムを併用せず本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤を併用した時は約 65 時間、バルプロ酸ナトリウムも本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤も併用しなかった時は約170 時間)を経過している場合は、初回用量から「用法・用量」に従って再開することが推奨される。

 

各併用薬別の消失半減期とその 5 倍の期間の目安
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合
外国人健康成人にバルプロ酸ナトリウム 500mg(1 日 2 回)と本剤を併用した時の本剤の t 1/2 は約 70 時間であった。したがって、t 1/2 の 5 倍の期間は約 350 時間
■バルプロ酸ナトリウムを併用せず、本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤を併用する場合
グルクロン酸抱合の誘導作用を有する抗てんかん薬を服用している外国人の成人患者に本剤を漸増的にadd-on 投与(1 日 2 回反復経口投与)した時の t 1/2 は約 13 時間であった。したがって、t 1/2 の 5 倍の期間は約65 時間
バルプロ酸ナトリウムも本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤も併用しない場合
日本人健康成人に本剤 25~200mg を単回経口投与した時の t 1/2 は約 31~38 時間であった。したがって、t 1/2の 5 倍の期間は約 170 時間

 

作用機序
Na + チャネルを頻度依存的かつ電位依存的に抑制することによって神経膜を安定化させ、グルタミン酸等の興奮性神経伝達物質の遊離を抑制することにより抗痙攣作用を示すと考えられている。
なお、双極性障害に対して効果を示す機序は明らかになっていない。

 

半減期
単回経口投与:約 31~38 時間

 

食事の影響
食後投与では空腹時に比べ血漿中ラモトリギンの Tmax は遅延したが、AUC に有意な差を認めなかった。
(効果に大きな影響はない)

 

併用薬の影響
◆オランザピン(ラモトリギンのAUC減少)
◆アリピプラゾール(ラモトリギンのAUC減少)
その他
◆バルプロ酸ナトリウム、◆本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤(フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドン、リファンピシン、ロピナビル・リトナビル配合剤)◆アタザナビル/リトナビル、◆カルバマゼピン、◆リスペリドン、◆経口避妊薬(卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤)については他項参照

 

代謝
ラモトリギンは経口吸収された後に主にグルクロン酸転移酵素で代謝され、そのほとんどが β-グルクロニダーゼ加水分解性の N2-グルクロン酸抱合体(M1)として尿中に排泄される。

 

禁忌(次の患者には投与しないこと)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

 

重要な基本的注意

(1)本剤の投与による発疹は斑状・丘疹状にあらわれることが多く、重篤な皮膚障害の発現率は、本剤投与開始から 8 週間以内に高く、また、バルプロ酸ナトリウムと併用した場合、あるいは小児において高いことが示されているので、本剤の投与にあたっては十分に注意し、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。

(2)小児において、発疹の初期徴候は感染と誤診されやすいので、本剤投与開始 8 週間以内に発疹及び発熱等の症状が発現した場合には特に注意すること。
重要な基本的注意
(3)双極性障害患者を含め、うつ症状を呈する患者は希死念慮があり、自殺企図のおそれがあるので、このような患者は投与開始早期並びに投与量を変更する際には患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。また、新たな自傷、気分変動、アカシジア/精神運動不穏等の情動不安定の発現、もしくはこれらの症状の増悪が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行うこと。
(4)自殺目的での過量服用を防ぐため、自殺傾向が認められる患者に処方する場合には、1 回分の処方日数を最小限にとどめること。
(5)家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。
(6)てんかん患者では、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、てんかん発作の増悪又はてんかん重積状態があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、発疹の発現等安全性の観点から直ちに投与を中止しなければならない場合を除き、少なくとも 2 週間以上かけて徐々に減量するなど慎重に行うこと。
(7)眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

 

併用注意
バルプロ酸ナトリウム: 本剤の消失半減期が約 2 倍延長する

本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤(本剤の血中濃度が低下する)
フェニトイン
カルバマゼピン
フェノバルビタール
プリミドン
リファンピシン
ロピナビル・リトナビル配合剤

アタザナビル/リトナビル: アタザナビル及びリトナビル両剤と本剤を併用した場合に本剤の血中濃度が低下したとの報告がある。

カルバマゼピン:本剤とカルバマゼピンの併用により、めまい、失調、複視、霧視、嘔気等が発現したという報告があり、通常、これらの症状はカルバマゼピンの減量により回復する。

リスペリドン:本剤とリスペリドンの併用時には、それぞれの単独投与時に比較して、傾眠の報告が多いとの報告がある。

経口避妊薬(卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤):本剤とエチニルエストラジオール・レボノルゲストレル配合剤との併用において、以下の報告がある。
1)本剤の血中濃度が減少したとの報告があるので、本剤維持用量投与中に経口避妊薬を投与開始又は投与中止する場合には、本剤の用量調節を考慮すること
2)レボノルゲストレルの血中濃度が減少し、血中卵胞ホルモン(FSH)及び黄体形成ホルモン(LH)が上昇し、エストラジオールが僅かに上昇したとの報告がある。
なお、他の経口避妊薬及び高用量のエストロゲンとの併用は検討されていないが、同様の影響が考えられる。

副作用
重大な副作用
1)中毒性表皮壊死融解症及び皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)

2)薬剤性過敏症症候群
3)再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症
4)血球貪食症候群

その他の副作用5%以上のもの:
傾眠、めまい、胃腸障害(嘔気・嘔吐、下痢等)、肝 臓 肝機能検査値異常

副作用をより初期段階で診断し治療するために、患者又はその家族に対しては、皮膚障害がみられた場合は、直ちに医師・薬剤師に相談するよう指導すること。

双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に用いた場合:
承認時までに、双極Ⅰ型障害患者(成人)を対象に実施した国内臨床試験では、皮膚粘膜眼症候群及び中毒性表皮壊死融解症の報告はなかった。

 

 

妊娠に関して

FDAの妊娠リスクカテゴリー: C(2018 年 7 月)

オーストラリア分類 :D(2018 年 10 月)

 

2020年8月4日 | カテゴリー : | 投稿者 : wpmaster