レキサルティ(ブレクスピプラゾール)

レキサルティは、2006年に大塚製薬が見いだした国産の非定型抗精神病薬です。

大塚製薬を巨大企業に変身させたエビリファイの後継薬であり、国内では大塚製薬が、海外では大塚製薬とルンドベックが開発に当たり、市場導入されました。

発売当時大塚製薬のMRから、「ブレクスピプラゾール」という一般名は、「ブレイクスルー(障害を突破する)」に掛けていると聞いたことを覚えています。

レキサルティの本邦での適応は統合失調症です。米国では統合失調症の治療薬、および、うつ病の治療補助薬としてFDAに承認されています。

レキサルティの吸収は、食事の影響を受けません。食後の服用も食前や眠前の服用も可能です。

胃酸の影響について。胃酸を抑えるオメプラゾール(PPI)との併用はレキサルティの吸収に影響を与えませんが、効果は強く出る可能性があります。(オメプラゾール 40 mg との併用で AUC が22%増加)

統合失調症に対する有効性についてエビリファイと比較した臨床試験があります。それによると、有効性は同等、体重増加率もほぼ同じでしたが、アカシジアの発生率がレキサルティで低かったと報告されています。

体重増加についてエビリファイと比較した研究において、投与52週時点でレキサルティが平均 3.2 kg、エビリファイが平均 4.0 kg の体重増加を認めました。

また、レキサルティとラツーダ(ルラシドン)を比較した研究では、統合失調症に対する有効性は同等であったものの、体重増加とコレステロール値の上昇については、ラツーダが優れていました。

 

作用機序

レキサルティは、セロトニン1A受容体(5-HT1A受容体)の部分アゴニストとして作用します。

部分アゴニストは、結合した受容体に対して遮断と刺激の両方の作用を及ぼします。

遮断と刺激の比率は固有活性として表現され、臨床的効果を決定するものとなります。

エビリファイと比較して、レキサルティのセロトニン1A受容体に対するアゴニストとしての効果は、遙かに強いものです。
(結合親和性も固有活性も)

レキサルティは、ドーパミンD2受容体の部分アゴニストとして作用します。

エビリファイと比較して、レキサルティのドーパミンD2受容体に対するアゴニストとしての効果は、弱くなっています。(エビリファイの固有活性60%に対してレキサルティ45%)

固有活性が低い分、レキサルティはエビリファイに比べてアカシジアの出現が少なくなっています。

レキサルティは、セロトニン2A受容体(5-HT2A受容体)のアンタゴニスト(拮抗薬)として作用します。

エビリファイと比較して、レキサルティのセロトニン2A受容体に対するアンタゴニストとしての効果は、強くなっています。

レキサルティは、主にCYP3A4 と CYP2D6によって代謝されます。代謝物は活性を持ちません。

レキサルティは、眠気やアカシジアでエビリファイが使えなかった人にとって、有望な選択肢となる可能性があります。

 


(以下はIFなどを参考にしています)

レキサルティ錠 1 mg / レキサルティ錠 2 mg / REXULTI
一 般 名:ブレクスピプラゾール / Brexpiprazole

製造販売元:大塚製薬株式会社

構造式

 

効能又は効果
統合失調症

 

用法及び用量
通常、成人にはブレクスピプラゾールとして 1 日 1 回 1 ㎎から投与を開始した後、4 日以上の間隔をあけて増量し、1 日 1 回 2 mg を経口投与する。

本剤と CYP2D6 阻害剤(キニジン、パロキセチン等)及び/又は強い CYP3A4 阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を併用する場合及び CYP2D6 の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では、本剤の血漿中濃度が上昇するおそれがあるため、以下の表を参考に用法及び用量の調節を行うこと。

 

QT/QTc 評価試験
統合失調症/統合失調感情障害患者を対象として、4 mg 又は 12 mg の用量におけるブレクスピプラゾールの QTc 間隔に及ぼす影響を評価した試験では、QTc 間隔の延長は認められなかった。

 

受容体に対する結合親和性 [Ki値(nmol/L)]

5-HT 1A 受容体 0.12
α 1B 受容体 0.17
D 2L 受容体 0.30
——————–
5-HT 2A 受容体 0.47
α 2C 受容体 0.59
D 3 受容体 1.1
——————–
5-HT 2B 受容体 1.9
α 1D 受容体 2.6
5-HT 7 受容体 3.7
α 1A 受容体 3.8
D 4 受容体 6.3
——————–
H 1 受容体 19
5-HT 2C 受容体 34
——————–
M 1 受容体 >1,000‡
M 2 受容体 >1,000‡

セロトニン 5-HT1 A 受容体部分アゴニスト作用

セロトニン 5-HT 2A 受容体アンタゴニスト作用

ドパミン D 2 受容体部分アゴニスト作用

 

血中濃度の推移
単回投与
最高血中濃度到達 6時間、半減期 53~67 時間

反復投与
最高血中濃度到達 4時間、半減期 92 時間
投与 10 日で定常状態に到達する

 

禁忌(次の患者には投与しないこと)
昏睡状態の患者[昏睡状態を悪化させるおそれがある。]
バルビツール酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある。]
アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

 

重要な基本的注意
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

レキサルティ使用中に特に賭博に対する激しい衝動を発現したり、このような衝動を制御できない可能性があることが外国の製造販売後の報告により示唆されています。賭博よりも頻度は低いですが、衝動的で強迫的な性質の制御不能な性行動、消費行動、暴食・過食などの他の衝動の報告もなされています。

本剤の投与により体重増加及び脂質異常症などの代謝の変化が発現することがあるので、本剤投与中は体重の推移を注意深く観察し、体重の変動が認められた場合には原因精査(合併症の影響の有無等)を実施し、必要に応じて適切な処置を行うこと。

嚥下障害が発現するおそれがあるので、特に誤嚥性肺炎のリスクのある患者に本剤を投与する場合には、慎重に経過を観察すること。

投与初期、再投与時、増量時にα交感神経遮断作用に基づく起立性低血圧があらわれることがあるので、患者の状態を慎重に観察し、低血圧症状があらわれた場合は減量する等、適切な処置を行うこと。

 

重大な副作用
悪性症候群(頻度不明)、遅発性ジスキネジア(頻度不明)、麻痺性イレウス(頻度不明)、横紋筋融解症(頻度不明)、高血糖(0.1%)、糖尿病性ケトアシドーシス(頻度不明)、糖尿病性昏睡(頻度不明)、痙攣(0.1%)、無顆粒球症(頻度不明)、白血球減少(0.1%)肺塞栓症(0.1%)、深部静脈血栓症(0.1%)

その他の副作用(1%以上のもの、症例数 1,520)
アカシジア 78 (5.1)
不眠症 68 (4.5)
頭痛 68 (4.5)
振戦 43 (2.8)
傾眠 30 (2.0)
激越 28 (1.8)
錐体外路障害 28 (1.8)
悪心 28 (1.8)
便秘 28 (1.8)
浮動性めまい 21 (1.4)
鎮静 17 (1.1)

 

2020年11月15日 | カテゴリー : | 投稿者 : wpmaster