グーグルの「検索パフォーマンス」でアクセス解析をしていて、最近大きく増えているのが、トリンテリックスの検索です。
トリンテリックスは、SSRIプラスアルファの薬(セロトニン再取り込み阻害+セロトニン受容体調節薬)ですが、特に認知機能の改善効果とPMDDに対する潜在的可能性に大きな期待がかかります。
トリンテリックスの認知機能改善効果については、本日追加の記載をしていますので参考にして下さい。(⇒トリンテリックス)
そのほか、デエビゴと悪夢、ジェミーナの避妊効果などについての検索が多く見られました。順を追って記載します。
悪夢
当院では、デエビゴによる悪夢の訴えは多くありません。多いのは、ミルタザピン(リフレックス・レメロン)による悪夢の訴えです。
当院でのミルタザピン投与は7.5mgが多いのですが、7.5mg投与では殆ど悪夢の訴えはありません。7.5mg(0.5T)から15mg(1T)に増量したときに、一部の患者さんが悪夢を訴えられ、増量できないことがあります。
ミルタザピンはα2拮抗作用を有しています。PTSDの悪夢にα2作動薬のカタプレスなどが使われることから類推すると、ミルタザピンのα2拮抗作用が悪夢に関係していると思われます。
一方で、ミルタザピンは5HT2A拮抗作用も有しています。この5HT2A拮抗作用は、α2拮抗作用がもたらす悪夢を打ち消す方向で作用していると思われます。
ベンゾジアゼピン作動性でない3種の睡眠薬、ロゼレム、ベルソムラ、デエビゴのうち、デエビゴは比較的悪夢の訴えが多いと思います。
最も少ないのはロゼレムです。副作用報告を参考に比較すると次のようになります。
(悪夢)
ロゼレム:1,864 例中 1例(0.1%)
ベルソムラ:1,784 例中 27例(1.5%)
デエビゴ:884 例中 12例(1.4%)
(異常な夢)
ロゼレム:1,864 例中 0例(0.0%)
ベルソムラ:1,784 例中 36例(2.0%)
デエビゴ:884 例中 16例(1.8%)
ジェミーナ
ジェミーナの避妊効果
ジェミーナは超低用量経口避妊薬です。
他のピルと避妊効果に差はありませんが、飲み忘れや下痢による吸収不良で、パールインデックスは0ではありません。
ある調査では、ジェミーナと同じ組成のピルのパールインデックスは2.38でした。これは、100人の女性がジェミーナを服用しているとして、1年間に、100人のうちの2人強が妊娠するということです。
メーカーの説明書には、次の記載があります。
服用中に激しい下痢、嘔吐が続いた場合には本剤の吸収不良をきたすことがあり、妊娠する可能性が高くなるので注意すること。
ジェミーナとニキビ
副作用報告をみると、241 例中 1例(0.4%)にニキビの出現があったとされています。
また、ジェミーナと同組成のピルは、FDAからニキビの治療薬として承認を受けていません。
しかし、ピル一般が持つ作用として、ニキビの改善効果は十分考えられます。
ピルの中では、理論的に考えれば男性ホルモンの少ないプロゲスチンを使用した、(アンドロゲンが少ない)第三世代、(テストステロン由来でない)第四世代のピルが有利ですが、実際はそれほどの差はありません。
おそらく、プロゲスチンの種類の違いよりも、ニキビの改善にはエストロゲン成分の効果がより大きく働いているからだと思います。
エストロゲン成分は、卵巣と副腎からのアンドロゲン分泌を減少させます。
ジェミーナと性欲
ピルが女性の性機能に及ぼす影響は、あまり明確ではありません。
ピルは、体内のアンドロゲン、エストラジオール、プロゲステロンのレベルを低下させます。またオキシトシン機能を阻害するとも考えられています。
これらにより、ピルの使用は、パートナーを求める行動の減弱、性的刺激に対する期待反応の減弱、嫉妬心の増加につながる可能性があります。
しかし、性機能障害とピルの関係については、さまざまな矛盾した結果が出ているため、結論は出ていません。
ジェミーナと同成分のピルを使用した一人の女性の評価を紹介します。
「このピルは私にあっている。今まで5種類のピルを使ったが、散々だった。ニキビは出る、気分の変化は激しい。落ち込みが強い。このピルにして、気分の変化は収まり、落ち込みはなくなり、性欲も元に戻った。」