SSRIと妊娠
SSRI服用中の女性から、子どもが欲しいのでSSRIを減らしたいという相談がありました。セルトラリンを服用している方です。
この方とは別に、双極の女性からも同様の相談がありました。その方は、ラモトリギン、炭酸リチウム、ロラゼパムを服用されている方です。
妊娠は、予期せずに起こることがあります。統計では、妊娠の50%が予定外であったとされています。
つまり、妊娠可能年齢の女性では、いつでも妊娠が起こりえると想定して、薬を選ぶ必要があります。
SSRIと妊娠について考えますと、現時点では結論めいたことは言えないというのが正直な感想です。確かに、SSRI服用女性では、産後の出血、早産、その他の産後合併症が増えるという報告があります。しかし、交絡因子の影響が十分考慮されたデータではありません。
また、SSRIで治療された人の子どもでは、言語障害のリスクが高くなると言う研究もあります。これも、交絡因子の影響を考えたときに、そのまま受け取れるものとは言い切れません。
ただし、SSRIのうちパロキセチンについては、妊娠可能年齢の女性では避けるべきでしょう。FDAの妊娠カテゴリーは「D」で、心房中隔欠損の危険性が高くなるとされています。
混合性のうつ病
双極の香りがするうつ病、しかし双極の基準は満たさない。そのような抑うつ障害群の障害については、「混合性の特徴を伴う」という指定子(specifier)がつきます。
例示すれば、うつ状態のときに、多弁であったり、多くの考えが湧いたり、寝なくても平気だったり、エネルギーが増加したりします。
このようなうつ病に対して、抗うつ薬の効果は限定的です。研究者によっては、抗うつ薬の投与は危険であるとさえ言います。
気分安定効果をもつ一部の抗精神病薬での治療が推奨されています。
イフェクサー
副作用がやや強く、日本人には使いにくいと思われているSNRIです。ミルタザピンとの組み合わせは、有名な「カリフォルニア・ロケット 燃料」と呼ばれるものです。
最初に使った抗うつ薬が効かなかったときに、イフェクサーに切り替えるとうまくいくケースが多いと報告されています。
STAR*D試験では、切り替えにイフェクサーを使った場合の寛解率が25%、セルトラリンへの切り替えでは18%でした。ただし、両者に統計的な「有意差」は出ていません。
当院は、他院よりもイフェクサーを使う比率は多いかも知れません。しかしやはり、吐き気などの消化器症状や血圧上昇で、使える人は限定的です。
誕生日
11月18日生まれ
1904年 – 古賀政男、作曲家、国民栄誉賞( 1978年没)
人生の並木路、誰か故郷を想わざる、人生劇場、無法松の一生、柔
11月20日生まれ
1942年 – ジョー・バイデン、政治家(合衆国次期大統領)
11月22日生まれ
1869年 – アンドレ・ジッド、小説家( 1951年没)
ノーベル文学賞。彼が1951年2月19日にパリで亡くなった後の1952年、ローマカトリック教会は彼の作品を禁書目録に載せました。
アンドレ・ジイドで馴染んできましたので、ジッドという表記には少し違和感があります。フランス語の発音はジイドに近い気がしますし。
ジイドの言葉。「真実を求めている人を信じなさい。それを見つけた人を疑ってください。」
高校生の時に「狭き門」を読んで、大きなショックを受けました。当時はアリサとジェロームばかり追いかけていました。今は、ジェロームを愛しながら身を引いた妹ジュリエットの強さに気持ちが動きます。
読み返すと、今でも言葉と情景の一つ一つが心に刺さります。アリサの日記は、レギーネとの婚約を解消したキルケゴールと通じるものがあります。レギーネを生涯愛し続けながら、神と婚約するために彼女と破約したとキルケゴールは言います。
「人間的に言うなら確かに、彼女は私の生涯において唯一の、そして、第一位を占めており、また占めるべきであろう—-しかし、神が第一の優位を占めているのである。彼女と私の婚約も、彼女と私の破約も、本来的には神と私の関係なのである。彼女との破約は、神と私の婚約なのだ」(キルケゴール)
アリサの日記にも、同じ思想があふれています。
「わたしがまだ幼かったとき、すでにわたしはあの人のために美しくなろうとねがっていた。今にして考えてみると、わたしが完璧(かんぺき)を志したというのも、すべてあの人のためなのだった。それなのに、その徳を全うするため、あの人のいることが妨げになるとは。」(アリサの日記)
「美徳と愛とが融け合っているような魂があったとしたら、それはどんなに幸福なことだろう! おりおりわたしには、愛するということ、できるかぎり愛し、ますます愛するということをほかにして、はたして美徳というものがありうるだろうか疑わしくなってくる……わたしにはときどき、悲しいかな、徳というものはただ愛にたいする抵抗だとしか思われなくなる!」(アリサの日記)
「あの人はわたしにこだわり、神よりもわたしを愛し、しかもわたしは、あの人にとって一つの偶像になってしまい、あの人が美徳へ向ってもっと深く歩み入ろうとするのを引きとめている。・・・どうかわたくしに、あの人にもうわたくしを愛さなくなるよう説きさとす力をおあたえください。そういたしましたら、このわたしの功徳のかわりに、さらに立ちまさるあの人の功徳を主の御前に捧げることができましょう……それに、今、わたくしの心があの人を失うことで泣き悲しむにいたしましても、やがて、主のうちにあの人を見いだすことになるのではありますまいか……」(アリサの日記)
アリサやキルケゴールの思いは、十分に理解できますし尊重もします。しかし、今の私の考えとは違います。今の私には受け入れがたいものです。
(アリサの日記は、山内義雄訳、狭き門、新潮社文庫より引用)