前回投稿で各不安障害の比率を示しましたが、これはAPA(アメリカ精神医学会)によるものです。つまりアメリカ人の統計と言うことになります。
感覚的に、日本人では社交不安障害の比率が高い印象があります。東アジアの諸民族の中でも一際日本人に多いのが社交不安障害ではないかと思われます。あくまでも主観的な印象ですが。
社交不安障害を持つ人は、不慣れな場所や自分が品定めされるような状況に対して強い恐怖を体験します。ただし、このような不安や恐怖が不合理であることを自分自身では分かっています。分かっていてもそれが止められないので、なんとかその状況を避けようとするのです。そのため社会生活能力が著しく損なわれる可能性があります。
不安と恐怖は身体、認知、行動の3つの領域で様々な症状を惹起します。
身体面の症状としては、赤面、発汗、震え、筋肉の緊張、胸苦しさ、動悸、胸痛、頭痛、口の乾き、めまい、吐き気、下痢、さらには非現実感や自分が自分でないような離人感覚。時に、症状が激烈でパニック発作に至る場合があります。
認知面の症状は、否定的な考えや自信の低下です。自分を否定的に評価し、他人の社会的能力を過大評価する傾向があります。これらが長期間に及ぶと、自尊心が侵食されてしまいますので、治療を行うことがとても重要になります。
行動面の特徴的な症状は回避です。社交不安障害を持つ人は、自分の実際の好みや欲望で行動するのではなく、恐怖と回避に基づいて行動を選択する傾向があります。たとえば、発表がある授業は取らない、昇進を辞退するといったことです。さらには、学校を中退する、仕事を辞める、不安を収めるためにアルコールを使用するなどといったこともあります。これらは社会生活の質を大きく低下させます。
診断基準
SADのDSM-5( APA )による診断基準を示します。
治療
薬物療法としては
SSRI、SNRI、βブロッカー、ベンゾジアゼピンなどが主に用いられます。また、ヒドロキシジン(アタラックス-P)が用いられることもあります。
個々の症状の強さ、薬剤の適合性、副作用などを勘案し、慎重に薬剤を選択しますが、第一選択薬としてはSSRIが推奨されています。またベンゾジアゼピンについては依存性と耐性に注意が必要です。
また社交不安障害には精神療法、認知行動療法(暴露、認知の再構築、モデリングなどのSST)、ACT(Acceptance and Commitment Therapy )などの非薬物療法の併用が必須であろうと考えています。