FDAの枠囲み警告

米国食品医薬品局(FDA)の枠囲み警告(Boxed Warning)はブラックボックス警告 (black box warning)とも呼ばれます。

枠囲み警告は、深刻なリスク、または、生命を脅かすリスクに注意を喚起するためのもので、FDAの発する最大級の警告です。

枠囲み警告の薬には、警告ラベルを貼ることが求められます。

 

精神科関連では、最近ベンゾジアゼピン系薬に枠囲み警告の更新が求められました。乱用、中毒、身体的依存、離脱症状などの深刻なリスクに対処するためです。

現在のベンゾジアゼピンへの警告では、重大なリスクや有害性についての情報が十分でないため、不適切に処方されて使用される可能性があるとされました。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、推奨される用量で服用した場合でも、誤用、乱用、および中毒につながる可能性があります。特にベンゾジアゼピン系薬剤がオピオイド系鎮痛剤、アルコール、または違法薬物などの他の薬物と併用された場合には、過剰摂取や死亡につながることがあります。

ベンゾジアゼピンは、処方された通りに服用していても、数日から数週間にわたって定期的に服用すれば、身体的依存が生じることがあります。急に止めたり、投与量を急に減らしたりすると、けいれんなどの離脱症状が起こり、生命を脅かすこともあります。

 

以下、精神科関連の薬に絞って、FDAの枠囲み警告をみてみます。

 

抗うつ薬全般

(セルトラリンの例)

抗うつ薬は、小児および若年成人患者における自殺念慮および行動のリスクを増加させます(5.1)

臨床症状の悪化や自殺念慮、自殺行動の出現を注意深く監視してください(5.1)。

(レクサプロの例)

うつ病(MDD)およびその他の精神疾患のために抗うつ薬を服用している小児、青年、若年成人において、自殺念慮および自殺行動のリスクが増加します。

レクサプロは、12歳未満の小児への使用は承認されていません(5.1)。

 

抗精神病薬全般

(リスパダールの例)

抗精神病薬による治療を受けている認知症関連精神病の高齢者では、死亡リスクが上昇します。

リスパダールは、認知症関連精神病患者への使用は承認されていません。(5.1)

 

ゾルピデム(マイスリー)

アンビエン(ゾルピデム)の使用後に、睡眠中の歩行、睡眠中の運転、完全に覚醒していない状態での他の活動への従事など、睡眠時の異常行動が起こる可能性があります。

これらの現象の中には、死亡を含む重篤な障害をもたらすものもあります。睡眠時の異常行動(4, 5.1)が現れた場合は、直ちにアンビエン(ゾルピデム)を中止してください。

 

エスゾピクロ(ルネスタ)

ルネスタの使用後には、睡眠中の歩行、睡眠中の運転、完全に覚醒していない状態での他の活動への従事など睡眠時の異常行動が起こる可能性があります。

これらの事象の中には、死亡を含む重篤な障害をもたらすものもあります。患者が睡眠時の異常行動を起こした場合は、直ちにルネスタを中止してください(4, 5.1)。

 

メチルフェニデート(コンサータ)

コンサータは、薬物依存やアルコール依存症の既往歴のある患者には、慎重に投与すべきです。

慢性的な乱用的使用は、様々な程度の異常行動を伴った、強い耐性と心理的な依存をもたらす可能性があります。

 

ラモトリギン(ラミクタール)

スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症など、生命を脅かす重篤な発疹、および/または発疹に関連した死亡例が、ラモトリギンによって引き起こされています。

重篤な発疹の発生は、成人よりも小児に多く見られます。

発疹のリスクを高める要因としては、以下のものがあります。
– バルプロ酸塩との併用。
– ラミクタールの推奨初期用量を超えた投与。
– ラミクタールの推奨用量を超える増量。(5.1)

良性の発疹もラモトリギンによって引き起こされますが、どの発疹が重篤化したり、生命を脅かすような発疹になるかを予測することはできません。ラミクタールは、明らかに薬剤との関連性がない場合を除き、発疹の最初の徴候が現れた時点で中止すべきです。(5.1)

 

カルバマゼピン(テグレトール)

重篤な皮膚反応-中毒性表皮壊死融解症(TEN)やスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)を含む、重篤で時に致命的な皮膚反応がカルバマゼピンで発生しています。これらの反応が起こった場合は、カルバマゼピンを中止してください(5.1)

– アジア系の患者は、他の集団と比較して、TEN/SJSのリスクが10倍高くみられます。HLA-B*1502対立遺伝子陽性者を含む遺伝的にリスクの高い患者へのカルバマゼピンの使用は避けてください(5.1)

再生不良性貧血と無顆粒球症 – 再生不良性貧血と無顆粒球症がカルバマゼピンで起こる可能性があります(5.2) – カルバマゼピンを開始する前に血算検査(CBC)を行なってください。重度の骨髄抑制が発現した場合は、カルバマゼピンの中止を検討してください(5.2)

 

 

バルプロ酸(デパケン)

致死性の肝毒性が、通常、治療の最初の 6 ヶ月の間にみられることがあります。2歳未満の小児およびミトコンドリア障害のある患者は高リスクです。注意深く患者を監視し、治療の前に血液の肝機能検査を行い、その後も繰り返し検査してください(5.1)

特に神経管欠損やその他の主要な奇形、およびIQ低下といった胎児リスクがあります(5.2、5.3、5.4)

致死的な出血を伴う膵炎があります(5.4)。

2020年10月13日 | カテゴリー : | 投稿者 : wpmaster