なぜ人は眠るのか、眠らなければいけないのか。最近の研究では、脳における代謝の恒常性維持と覚醒中に脳に蓄積した老廃物の処理が、睡眠の主な目的であることが示唆されています。老廃物とは、例えばアルツハイマー病で異常蓄積するアミロイドベータ蛋白などです。
そういう意味では、睡眠の不足は重大な健康障害を招く可能性があります。
今回は、睡眠障害の薬物治療について記載してみます。
不眠の治療では、薬物療法以外に、睡眠衛生がとても重要です。
例えば、毎日決まった時間に起きる、ベッドでは長時間起きて過ごさない、ベッドで読書・TV・スマホなどの作業をしない、長時間の昼寝を避ける、アルコールを控える・やめる、習慣的に運動する、などです。
また、薬物治療をはじめる前に、不眠の大きな原因である「うつ病」と「アルコール関連障害」について考慮し、可能な限り診断しておく必要があります。
つまり、うつ病とアルコール障害の存在診断をすること無く、睡眠薬を処方すべきではない、ということです。(トロントノート)
さらには、睡眠薬は2週間を超えて処方すべきではないと言われます。耐性と離脱が起こるからと説明されています。(カプラン、CMDT)
以下、不眠に用いる薬を示します。
ワイパックス 就寝前に0.5mg
マイスリー 就寝前に0.5mg
上記2剤は不眠にまずまず有効で、高齢者にも使いやすい薬とされています。
またマイスリーは、中途覚醒時に用いることも可能です。
ルネスタ 就寝前に2mg
マイスリー類似の効果を持ちますが、高齢者と肝障害の患者では1mgを服用します。
ベンゾ系睡眠薬を用いる上での注意点
超短時間型の睡眠薬(マイスリーやハルシオン)では、健忘エピソードが起こりやすい。
長時間型の睡眠薬(ダルメートなど)は、高齢者では蓄積しやすく、認知の迂遠や運動失調、転倒、傾眠を招くことがあります。
抗ヒスタミン薬のレスタミン25mgやアタラックス25mgは、睡眠薬としても使用可能で依存性も生じませんが、抗コリン作用により高齢者に錯乱や排尿障害を招くことがあります。レスタミンの成分であるジフェンヒドラミンは睡眠薬として薬局で市販されています。
抗うつ薬のレスリンは、(抗うつ薬として使う量よりも)少量で不眠に有効です。また依存性もありません。
ロゼレム(寝る前8mg)は、メラトニン受容体の作動薬で、概日リズムを調節して睡眠開始を導きます。
FDA(アメリカ食品医薬品局)が最近睡眠薬に関する警告を改訂しました。
重要な内容なので経緯を振り返りながら、簡単に紹介致します。