ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)

ジェイゾロフトは、米国ファイザー社により合成された選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI)です。(sertraline )

OD錠

1970年代にファイザーの研究室で開発されたセルトラリンは、1990年にイギリスに、1991年にアメリカに、2006年に日本に導入されました。

アメリカではゾロフトの商品名で発売されている代表的な抗うつ薬です。アメリカ映画では、登場人物がゾロフトのラベルの付いた薬を服用することで、その人物がうつ病を患っていることを暗示するシーンがあったりします。

ゾロフトという名前は、ラテン語の「ZO」(こころ)「LOFT」(持ち上げる)に由来します。日本ではすでに「アロフト」という類似した名前の薬が販売されていたため、混乱を避けるため、ジャパンの「J」を頭に付けて「ジェイゾロフト」の名前で販売されました。

ジェイゾロフト(セルトラリン)のわが国における適応症は、うつ病・うつ状態パニック障害外傷後ストレス障害です。

添付文書による服用方法は次の通りです。「通常、成人にはセルトラリンとして 1 日 25mg を初期用量とし、1 日 100mg まで漸増し、1 日 1 回経口投与する。なお、年齢、症状により 1 日 100mg を超えない範囲で適宜増減する。」

主な副作用は、悪心、傾眠、口内乾燥、頭痛、下痢、浮動性めまいなどです。

ジェイゾロフト(セルトラリン)の効果ですが、うつ病・うつ状態に対する改善率は 55.7%( 臨床試験:491/882 例)、パニック障害の改善率は 72.7%( 臨床試験: 352/484 例)と報告されています。

パニック発作の改善について見ると、意外なことに、低用量ではパニック発作の回数が減少したのに、高用量ではパニック発作の回数が減少しませんでした
低用量( 25-75mg)
高用量( 50-150mg)

ジェイゾロフト(セルトラリン)の服用禁忌は、 過敏症 、MAO 阻害剤を投与中あるいは投与中止後 14 日間以内、ピモジド投与中の人です。

年齢に基づく注意として、24歳以下の人では自殺リスクが高くなる可能性があること、50歳以上では骨折リスクが高くなることが指摘されています。 (SSRI、三環系などの抗うつ薬に共通の注意)

服用を中止する時には、離脱症状に注意して徐々に減量する必要があります。離脱症状は不安、焦燥、興奮、浮動性めまい、錯感覚、頭痛及び悪心などで、服用の中断から 2~5 日目に起こりやすいとされています。

ジェイゾロフト(セルトラリン)で離脱症状が起きるメカニズムは、以下のように推定されています。(①→②)
①長期投与によりセロトニン受容体が脱感作される(down-regulation)
②薬の中断により一時的にセロトニン欠乏状態になる

ジェイゾロフト(セルトラリン)との併用に注意が必要な薬剤は、トリプタン系偏頭痛治療薬ワルファリン、糖尿病薬ラスチノン(トルブタミド)などです。

トリプタン系偏頭痛治療薬 との併用では、セロトニン症候群の発生が報告されています。(海外)

ワーファリンの作用を増強します。また、トルブタミドのクリアランスを16%減少させます(=効果が長引く)。

また、SSRI服用患者では消化管出血のリスクが高まる事が知られていますが、NSAIDs やアスピリンを併用した場合には、さらに出血リスクが高まると報告されています。


希な副作用について

持続勃起症が起こる事があります。

遅発性ジスキネジアが起こる事があります 。

ジストニアが起こる事があります。

薬剤性パーキンソニズムが起こる事があります 。

脱毛の報告があります。

低ナトリウム血症 が起こる事があります 。


妊娠中の投与については、SSRI全般に言えることですが、低出生体重、自然流産、新生児肺高血圧などが発生する可能性が指摘されています。(パロキセチンが最も危険と言われ、最も使用経験が多いのはプロザックです。)

SSRIの中では、セルトラリンは胎盤通過性が最も低いとされ、妊娠中に服用する場合には、第一選択と記載した書物もありますが、奇形や胎児の骨発育不全との関連を指摘するものもあります。A. Bérard, J.-P. Zhao, and O. Sheehy, “Sertraline use during pregnancy and the risk of major malformations,” American Journal of Obstetrics and Gynecology, vol. 212, no. 6, pp. 795.e1–795.e12, 2015.

米国FDAのカテゴリーではCにランクされていました。2016年に改訂された最新のFDA認可添付文書には以下のように記載されています。

第一三半期にセルトラリンを服用した妊婦で、出産における異常は一般人口における異常と変わらなかった。異常が増加するといういくつかの研究があるが、これらの研究は結論が出ているものでは無い。

授乳時に抗うつ薬を服用する必要がある場合には、SSRIの中ではセルトラリンが最も安全とされています。また、有害事象の報告はありません。

QT延長が心配な患者については、SSRIの中ではセルトラリンが最も安全であると考えられています。

心筋梗塞急性期では、発症後2か月間は抗うつ薬の使用を控えるべきですが、必要な場合にはセルトラリンが選択されます。

肝障害の患者では、セルトラリンは避けるべきとされます。


セルトラリンの半減期は25-36時間で、主としてCYP2C19、CYP2C9、CYP2B6 及び CYP3A4 等で代謝され、CYP2D6の活性を阻害します。

児童・思春期領域ではプロザック(本邦未発売)に続くセカンドライン薬に位置づけられています。

米国FDAがPTSD治療薬として認可した薬剤は2つだけで、それはセルトラリンとパロキセチンの2剤です。

パキシル(パロキセチン)、イフェクサー(ベンラファキシン)と並び、性機能障害の原因となりやすい薬剤です。


ドパミントランスポーターに親和性があり、ドパミンを増加させる効果がありますが、セロトニン増加の100分の1ほどのもので、かなりな高用量で投与された場合を除き、臨床的には意味がないものと思われます。

シグマ1レセプターに親和性を持ちますが、セロトニンに対する効果の100分の1ほどのもので、やはり臨床的には意味がないものと思われます。


研究段階ですが、抗がん効果を期待されています。肝がん、直腸がん、リンパ腫、急性骨髄性白血病。

肝細胞障害、心筋障害の可能性が指摘されています。

グルタミン酸の取り込みを阻害し、グルタミン酸濃度を上昇させる可能性があります。

アストロサイトに対する障害作用により、脳変性疾患(認知症、パーキンソン病など)と関連する可能性が指摘されています。

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