QT延長という心電図の異常所見があります。突然死を起こす可能性があることで注意が必要な心電図異常とされます。
多くの精神薬がQT間隔(以下で説明します)に影響し、心室性の不整脈や突然死に至るリスクを増加させます。
QT間隔は、薬剤以外に電解質異常などでも延長します。低カリウム、低カルシウム、低マグネシウムなどです。また、先天的なQT延長症候群という病気もあります。
精神薬の中では、エビリファイ(アリピプラゾール)がQT延長に関して最も安全な薬剤であると考えられています。
心電図上、Q波の始まりからT波の終わりまでの時間をQT間隔といいます。
QT間隔は、上の図で QT interval と書かれている部分で、心室の電気的収縮期を表します(脱分極から再分極の終わりまで)。
QT間隔は、心電図の lead II、V5、V6のいずれかで測定します。
QT間隔は心拍数によって変化し、脈が速くなると短くなり、脈が遅くなると長くなります。
そのため、心拍数で補正したQTc間隔を用いて、その長短を評価します。通常は男性0.42秒(420ミリ秒)、女性0.43秒(430ミリ秒)以下です。
QT間隔の補正には、バゼットの式もしくはフレデリカの式を用います。フレデリカの式は脈が60未満か100を超える場合に用います。
QT延長が認められた場合の対応
QTcが500ミリ秒を超える場合は薬を中止し、血液検査を行ってカリウム、カルシウム、マグネシウムの濃度を測ります。また、循環器専門医にコンサルトします。
QTcが男性440ミリ秒、女性470ミリ秒以上の場合は、ECG検査を繰り返すと共に、薬剤の減量・変更を考慮します。また、血液検査を行ってカリウム、カルシウム、マグネシウムの濃度を測ります。必要に応じて循環器専門医にコンサルトします。
添付文書中、QT延長が禁忌とされている精神薬
レクサプロ(エスシタロプラム)
アナフラニール(クロミプラミン)
トフラニール(イミプラミン塩酸塩)
オーラップ(ピモジド)