強迫症/強迫性障害(抜毛症)

自分の意志に反して、ある考えが繰り返し浮かんできたり、ある行為をやめることができなかったりする障害が、強迫症(強迫性障害)です。

そのように浮かんでくる考えを強迫観念、行動を強迫行為といいますが、

強迫観念とは、何度も繰り返して生じる思考や衝動やイメージで、自分にとって望ましくないものとして体験されます。

強迫行為とは、強迫観念に従って(もしくは守らなければならない決まりとして)繰り返される行動または心の中の行為です。

強迫症に共通してみられる症状に、洗浄対称禁断的思考加害があります。

洗浄は、汚染に対する強迫観念と洗浄に関する強迫行為です。

対称は、対称性に対する強迫観念と、繰り返し、配列、数かぞえなどの強迫行為です。

禁断的思考は、攻撃や性的、宗教的な強迫観念と、それに関連した強迫行為です。

加害は、自分もしくは他者を傷つけることへの恐れと、それに関連した確認行為です。

DSM-5では、抜毛症と皮膚むしり症も強迫症の関連障害としてまとめられました。

抜毛症は、繰り返す抜毛と、それを減らそう・やめようと試みるものです。

皮膚むしり症は、皮膚の損傷につながる皮膚むしり行為の繰り返しと、それを減らそう・やめようと試みるものです。


強迫症の治療について述べます
(抜毛症と皮膚むしり症には行動療法を用いますが、別項目で説明しています)

強迫症は、治療しなければ慢性的な経過を取り、増悪と軽快を繰り返します

男性は女性よりも発症年齢が若く、チックの併発が多いと言われます。

女性には洗浄が男性には禁断的思考と対称性が多い傾向があります。

治療にはSSRIを中心とした薬物療法と、認知行動療法が有効です。

病態的には、脳内セロトニンの欠乏と、それに起因するドパミンの過剰が推定されています。

治療はSSRIの単独投与から開始します。我が国で強迫症に適応がある薬物は、ルボックス・デプロメール(フルボキサミン)とパキシル(パロキセチン)の2剤です。

薬の量と期間については、うつ病に用いるよりも、より高用量でより長期間の投与が必要です。

効果が十分でない場合には、SSRIの種類の変更、アナフラニール(クロミプラミン)への変更、増強療法を行います。

我が国では強迫症に対する保険適応がない薬剤であっても、すべてのSSRI、SNRIのイフェクサー(ベンラファキシン)、三環系のアナフラニール(クロミプラミン)強迫症に有効であると言われています。

SSRIのレクサプロ(エスシタロプラム)と三環系のアナフラニール(クロミプラミン)を用いる場合には、QT延長のチェックが必要です。

増強療法としては、SSRIに少量のアナフラニール(クロミプラミン)を加える方法と、抗精神病薬を加える方法があります。

増強療法に用いる抗精神病薬としては、リスパダール(リスペリドン)セレネース(ハロペリドール)、オーラップ(ピモジド)の有効性が高いとされています。

オーラップはQT延長に特に注意が必要な薬剤です。また併用にも注意が必要で、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、エスシタロプラムとは併用禁忌となっています。

2019年12月20日 | カテゴリー : 強迫関連 | 投稿者 : wpmaster