リフレックス(明治)/レメロン(MSD)という商品名で販売されているミルタザピンは、オランダのオルガノン社により合成された抗うつ薬です。
市場導入は、1994年オランダ、1995年ドイツ、1996年アメリカ、1997年イギリスと続き、日本には2009年に導入されました。
四環系抗うつ薬である テトラミド (ミアンセリン)に続いて開発されました。テトラミド同様にα2拮抗作用をもち、セロトニン、ノルアドレナリンの遊離を促進して、その作用を増強します。
我が国における適応症は、うつ病・うつ状態です。
1 日 15mg から開始して、通常量として15~30mgを寝る前に服用します。最大量は 1 日 45mg までで、増量は 1 週間以上の間隔をあけて 1 日15mg ずつ行うこととされています。
ただ、服用開始時にめまいなどの症状が出る場合がありますので、0.5錠(7.5mg)から服用を開始することも少なくありません。
臨床試験における有効性をみると、投与52週時点で66.4%の人に症状の改善が認められています。
また 臨床試験 で多く見られた副作用は、傾眠、口渇、体重増加、倦怠感、肝機能障害、便秘などでした。
薬理効果について
動物実験などを含めた研究から、以下のような薬理作用・効果・副作用が想定されます。
抗ヒスタミン作用
H1レセプターに対する強い拮抗作用を有しており、沈静、傾眠、食欲増加、体重増加、抗掻痒、催眠などの作用が想定されます。
抗不安作用
5-HT2A受容体拮抗作用により、抗不安効果が 期待できます。さらに鎮静、催眠、衝動性減少なども期待できます。
α2受容体拮抗作用
ミルタザピンを特徴付ける、中心的な薬理作用です。シナプス前α2受容体をブロックすることで、ノルアドレナリン神経、セロトニン神経、(さらにドパミン神経、アセチルコリン神経)の発火頻度を増加させ、 ノルアドレナリン、セロトニン、(ドパミン、アセチルコリン)の分泌を促進します。
5-HT2C受容体拮抗作用
抗うつ、抗不安、ドパミン分泌増加 、ノルアドレナリン分泌増加などが期待できます。
5-HT3受容体拮抗作用
この作用により、SSRIなどでみられる嘔気や下痢の症状が殆どないことが期待されます。
5-HT1A受容体に対する結合親和性は高くありませんが、2A、2C、3などの受容体がミルタザピンで塞がれているため、増加したセロトニンが効率的に1A受容体に作用し、抗不安効果をもたらすと考えられています。
薬物動態
15mgを単回投与した場合には、約1時間で血中濃度が最高となり、半減期は約32時間でした。
代謝
代謝は主に肝臓で行われ、CYP2D6、CYP1A2、CYP3A4などが関与します。また、活性代謝産物の効力は無視できる程度のものです。
酵素阻害
ミルタザピンのCYP1A2、CYP2D6、CYP3A4に対する阻害作用は弱いと考えられています。