100年以上前にアメリカで合成されたバルプロ酸ですが、合成から80年経った1963年に抗けいれん作用が見いだされ、1967年にフランスで初めて医薬品(抗てんかん薬)として承認されました。
日本では1974年に抗てんかん薬として、2002年に躁病治療薬として、2010年に片頭痛発作の抑制薬として承認されています。
(製造販売:協和キリン株式会社)
日本におけるバルプロ酸の適応病名は、1.各種てんかん、2.躁病および躁うつ病の躁状態の治療、3.片頭痛発作の発症抑制となっています。
双極性障害における効果をみると、躁または軽躁病相に対する有効率 71.1%、うつ病相に対する有効率 33.9%、混合病相に対する有効率 59.1%と報告されています。
てんかん、双極性障害に用いる場合の用法は、添付文書によれば次の通りです。 1 日 400~1,200mg を 1 日 2~3 回に分けて経口投与する。ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。
投与初期は1日200mgから始め、維持量として400~1200mgとするのがよいと思います。また、アドヒアランスを上げるために、就寝前1回投与がよい場合が多くあります。
治療上有効な血中濃度は 40~120μg/mL とされています
投与禁忌は以下の通りです。
1)重篤な肝障害のある患者
2)カルバペネム系抗生物質の併用
3)尿素サイクル異常症の患者
4)妊婦又は妊娠している可能性のある女性
バルプロ酸の投与では肝障害に注意が必要です。成人と言うよりは2歳以下の小児に認められやすく、時に致死的です。
一般的によく見られる副作用は、傾眠、ふらつき、頭痛などです。これら以外に、服用に際して十分に注意しなければならない以下のような副作用が存在します。
1.催奇形性
2.出産した児の知能低下
3.体重増加
4.脂質異常症
5.インスリン抵抗性の増加
6.男性の生殖能力低下
7.無月経と多嚢胞性卵巣 (PCO)
8.脱毛
薬理作用について
バルプロ酸の作用メカニズムは次のように考えられています。
1.電位依存性ナトリウムチャンネルの抑制
2.GABA神経系の賦活
1.について
電位依存性ナトリウムチャンネルの抑制により、過剰な神経伝達を減らします。
ナトリウムの神経細胞内への流入が減少することで、グルタミン酸の放出が減少し、興奮性の神経伝達が抑制されます。
2.について
GABA放出の増加と再取り込みの減少、GABA代謝の不活化などによりGABA神経系の作用を強くします。
2.のGABA増強メカニズムは、高濃度の場合にのみ観察されるとされています。