恐怖記憶

恐怖記憶扁桃体ドパミンノルアドレナリンについて考えます。

人が恐怖を感じ、それを記憶として脳に焼き付け、さらに無意識領域への忘却と健忘、記憶過敏反応を経験するのに、この2つのカテコールアミンが関与しています。

ドパミンとノルアドレナリンという2つのカテコールアミン作動神経系が、恐怖が引き起こす反応の獲得、表出、そして消去に極めて重要な役割を果たしていることが、動物実験などによって示されています。

扁桃体に存在するドパミンD1、D2受容体の刺激は、恐怖の発現を増強します。逆に、D1、D2受容体をブロックすることで、恐怖記憶の獲得が阻害されます

また、D3受容体のブロックや、D4受容体の刺激も、恐怖記憶の獲得を促進します。

扁桃体に、ドパミンよりも多量に存在するノルアドレナリンもまた、恐怖記憶を修飾します。 ノルアドレナリン は、α受容体とβ受容体を介して、扁桃体依存恐怖記憶の促進効果を有しています。

扁桃体に存在するβ受容体をブロックすると、恐怖記憶の獲得を阻害します。逆に、β受容体の刺激は恐怖記憶の獲得を促進します

またα2受容体の刺激が、恐怖記憶の形成を阻害することも、クロニジンを用いた実験などで示されています。

PTSDの人の扁桃体は、コルチゾールやノルアドレナリンなどのストレスホルモンによって障害を受けています

PTSDの人の扁桃体が過活動状態にある、つまり過敏になっているという研究結果が報告される一方、逆に、PTSDの人の扁桃体は機能低下を起こして活動が減弱しているという報告もあります。

これらは、共に事実であろうと考えられます。

虐待などの、人格が許容しない恐怖記憶に対して、前頭前皮質や前帯状皮質からの抑制指令が扁桃体の機能低下を引き起こせば、感情麻痺や無快感、解離を招きます

感情刺激に対する、扁桃体の反応性低下です。

上位中枢からの指令の減弱があれば、扁桃体は過活動状態になり、過覚醒や驚愕反応を招くと考えられます。