衝動性

双極性障害、注意欠如多動性障害(ADHD)、境界性パーソナリティ障害、アルコール等物質依存、パーキンソン病薬の服用、などで見られる衝動性は精神医学の重要なテーマです。

特にクリニック精神医学という観点からは、自殺傾向に繋がるという点で、極めて重要な症状と言えます。

衝動性とは考えずに行動すること。これをもう少し医学的に表現すれば、起こりうるであろう潜在的な結果を予見・考慮しないで、急速に行う自己制御に欠けた意思決定システムであると言えます。

衝動性に関係するモノアミンの影響については多くの研究があります。しかし、それらの研究では多くの矛盾する結論が報告されており、現時点で一定の結論を導き出すことは困難です。

今までに、以下のような研究報告がなされています。

まずドパミンについて。ドパミンはこの分野で最も多くの研究がありますが、D2・D3受容体の刺激は衝動性を誘発し、逆にD2・D3受容体のブロックは衝動性を軽減することが示されています

ADHD治療薬であるメチルフェニデートは、脳内ドパミン機能を高める薬ですが、衝動性に関しては二峰性の効果が報告されています。(濃度により衝動性を抑える場合と促進する場合があります)

また、セロトニンに関しても多くの研究があります。

セロトニンには、ある条件下で衝動性を抑える効果が報告されています。最も確からしいのは、罰を与えられた行動を抑制する効果です。例えば、マウスがある行動をした時に電気ショックという罰を与えると、マウスはその行動をする回数が減るのですが、セロトニンはその行動抑制を強化します。

また、セロトニン量のレベルと、ドパミンの衝動性への影響には強いつながりがあります。セロトニンが枯渇している状況でドパミンが増加すると、衝動性が高まります。

セロトニン受容体に関する研究では、セロトニン2A・2C受容体の刺激は衝動性を促進します。逆に、セロトニン2A・2C受容体のブロックは衝動性を軽減します

セロトニン1A受容体に関しては、衝動性を促進する場合と抑制する場合の、2つの研究成果が報告されています。

ノルアドレナリンの果たす役割については、現在精力的に研究が進められています。近い将来、衝動性に関与するモノアミンの影響について、より詳しい実態が解明されると期待しています。

2020年1月19日 | カテゴリー : 症状 | 投稿者 : wpmaster