エビリファイ(アリピプラゾール)は 1987 年に大塚製薬が合成した国産抗精神病薬です。
ドパミンD 2 受容体に対する部分アゴニスト(パーシャル・アゴニスト)作用を有していて、ドパミン神経活動が過剰な時には活動を抑え、活動が低下している時にはその活動を強めます。
このドパミン神経系を安定化させる作用を称して、ドパミン・システムスタビライザー(DSS)と呼ばれます。
弱きを助け強きを挫く、この夢のような作用を持つエビリファイは、2012年には全米で売り上げNo1の処方薬となり、開発した大塚製薬に巨万の富をもたらしました。
徳島の一企業が、世界的な製薬メーカーに変貌したのは、エビリファイのおかげであると言えるでしょう。
アメリカには、2002年にブランド名アビリファイ(Abilify)で市場導入されました。
2006年には日本市場にも導入されましたが、類似名薬品アビリットの存在によりアビリファイのブランド名は使用できず、エビリファイと改名しての上市となりました。
(アビリットは精神科では馴染みの深い薬です。一般名スルピリドなのですが、ブランド名はアビリット・ドグマチール・ミラドールと先発3品併売されていました)
効能・効果 は、統合失調症、双極性障害における躁症状の改善、うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る) 、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性となっています。
エビリファイ OD 錠 24mgについては、統合失調症 と双極性障害における躁症状の改善のみが適応症として認められています。
うつ病・うつ状態でエビリファイを使用する場合は、過去に選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)で治療を行ったが十分な効果が得られなかった場合であって、かつ、抗うつ薬と併用して使用する場合にのみ、投与が認められています。
各適応での使用最高量は次の通りです。
統合失調症 、双極性障害における躁症状:30mg
うつ病・うつ状態、小児期の自閉スペクトラム症:15mg
また、双極性障害における開始用量は 24mgとされています。
すべての適応症において、投与開始後エビリファイが定常状態に達するのに約2週間かかるため、2週間以内には増量しないことが望ましいとされています。
薬物動態
3mg単回投与の場合、3時間で血中濃度が最高値に達し、半減期は約 60 時間です。(6mg単回投与の場合も、ほぼ同程度半減期です。)
代謝関与する酵素は主として CYP3A4 と CYP2D6 ですので、SSRIとの併用では、特にパキシルとの併用に注意が必要です。
うつ病・うつ状態に対する国内臨床試験で認められた主な副作用は、アカシジア、体重増加、振戦、傾眠、不眠、ALT上昇、便秘などでした。
重要な基本的注意について、特に留意すべきこと。
まず車の運転ですが、副作用で眠気を生じる場合には運転禁止です。うつで用いることの多い3mgの量でも、人によっては強い眠気を生じます。
また、病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害があらわれたという報告があります。このような症状の出現には十分注意しておく必要があります。万一このような症状が現れた場合には、減量や中止の処置が必要です。
薬理作用
D2およびD3受容体に対してパーシャル・アゴニストとして作用し、統合失調症においては主としてドーパミン神経系の過活動状態を調節します。受容体占有率は、1日2mgの投与でも71%に達するようです。
5-HT1A受容体に対して、固有活性68%でパーシャル・アゴニストとして作用します。
5-HT2A受容体に対しては、基本的にアンタゴニストとして作用します。(固有活性12.8%を有しておりパーシャル・アゴニストとして考えることもできます)
5-HT2B受容体に対しては、逆作動薬として作用します
5-HT7受容体に対してはアンタゴニストとして作用しますが、親和性が低く、影響は限られています。
受容体親和性からは、以上のD2、D3、5-HT2B、5-HT1A、5-HT2A、(5-HT7)に対する作用が重要と思われます。