ミルタザピンと肥満

当院に通院中の20代前半の女性。最近とても状態がよく落ち着いていました。

しかし、ここ2週間で急に過食が始まり、炭水化物、特に甘いものが食べたくて仕方なくなり、体重も一気に増えてしまったといいます。

この方はリチウム、ラモトリギン、ミルタザピンの3種類の薬を服用しています。

ラモトリギンは、この3剤の中ではもっとも体重増加が起こりにくい薬剤です。体重に対してニュートラルとされますが、むしろ痩せるケースもあります。

リチウムは、体重増加に注意が必要な薬剤です。ある文献では、リチウム服用者の20%の人に10kg以上の体重増加があったとされています。

ナッサと呼ばれるミルタザピンは、この3剤の中でもっとも肥満に注意が必要な薬剤です。

ミルタザピンは、新しいタイプの抗うつ薬の中では最も体重増加傾向が強い薬剤です。
SSRIで一番体重増加が多いパキシル(パロキセチン)よりも体重増加傾向が強力です。

この女性の場合、当院受診前から不眠のためにミルタザピンを連用しており、徐々に効果が減弱したことから服用量が増えていました。

またリチウムが比較的多めの処方であったことも合わさって、急激な体重増加が起こったと思われます。

今後はミルタザピンの減量・他剤への変更、リチウムの減量で対応することとなりました。

ミルタザピンによる体重増加のメカニズムとして、次の2つが考えられます。

①ミルタザピンは、セロトニン2C受容体拮抗作用を持ちます。動物実験でセロトニン2C受容体の遮断が肥満をもたらすことが示されており、体重増加が著しい抗精神病薬(クロザピン、オランザピン、クエチアピンなど)も、セロトニン2C受容体拮抗作用を有しています。

(セロトニン2C受容体=5-HT2C受容体)

②ミルタザピンは、非常に強い抗ヒスタミン作用を有しますが、これが脳の満腹中枢を非活性化すると考えられます。

 

 
参考:リフレックス・レメロン(ミルタザピン)

2022年1月27日 | カテゴリー : , 副作用 | 投稿者 : wpmaster