ICD-11にみる複雑性PTSD

DSM-5では取り上げられなかった複雑性PTSDですが、2018年のICD-11ではPTSDとは明確に区別された状態として記述されています。以下に両者を簡略化して示します。

◆ 心的外傷後ストレス障害(6B40 Post traumatic stress disorder)

PTSDは、著しい脅威や恐怖をもたらす出来事に曝露された後に出現し、以下の3つの症状のすべてによって特徴付けられます。

1)トラウマの再体験。鮮明な侵入的回想、フラッシュバック、悪夢の中での再体験。
2)回避。トラウマを思い起こさせる考え、記憶、活動、状況、人を避ける。
3)持続的な過覚醒状態。例えば、予期しない雑音に対して過剰な覚醒状態となったり過剰な驚愕反応を示したりする。

症状は少なくとも数週間持続し、社会生活に深刻な障害を生じます。

複雑性心的外傷後ストレス障害(6B41 Complex post traumatic stress disorder)

複雑性 PTSDは最も一般的には、逃れることが困難もしくは不可能な状況で、長期間/反復的に、著しい脅威や恐怖をもたらす出来事に曝露された後に出現します。
(例:拷問、奴隷、集団虐殺、長期間の家庭内暴力反復的な小児期の性的虐待・身体的虐待

診断はPTSDの診断に加えて、以下に示す深刻かつ持続する症状によって特徴付けられます。
1)感情コントロールの困難さ
2)トラウマ的出来事に関する恥辱・罪悪・失敗の感情を伴った、自己卑下・挫折・無価値感
3)他者と持続的な関係を持つことや親近感を感じることの困難さ

これらの症状は、個人・家庭・社会・教育・職業・その他の重要な領域で深刻な機能不全をもたらします。


ICD-11で示されている複雑性PTSDの3つの症状(①感情の調節異常、②否定的自己像、③対人関係の障害)は、自己組織化の障害として概念化されています。(Disturbances in Self-Organization by Marylene Cloitre)

PTSDに有効とされる(トラウマ焦点化)認知行動療法とEMDRは、トラウマ的出来事に対する患者の記憶とそのトラウマが持つ個人的な意味を治療の標的にします。

想像の中で、もしくは実生活の中でトラウマに対する曝露を繰り返し、トラウマの持つ意味を再評価します。

このような治療作業を繰り返し行うことで、PTSDの症状軽減が進んでいきます。


(補足説明)

想像の中での曝露とは、トラウマとなった事件を想像の中で振り返り、その時感じた感覚や感情を覚えつつトラウマ体験を語るものです。想像曝露を繰り返すことで、トラウマに対する馴化が進むとされます。

標準的なEMDRでは、眼球運動を利用してトラウマの再処理と脱感作を行います。トラウマ場面を思い浮かべながら、眼球運動を利用して左右の脳に刺激を与えます。このような作業を通して、左右の脳のバランスが整えられ症状の改善に繋がります。
EMDRでは、外傷体験の言語化は必ずしも必要ないとされます。
(右脳:感情、感覚。左脳:理性、記憶、客観性。)

眼球運動を利用する標準的なEMDRの他に、振動を用いて左右の脳に交互刺激を与える方法もあります。

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