本邦で承認販売されているピル
* EE:エチニルエストラジオール
* 月経困難症保険適応の有無
ピルとニキビ
EE(エチニルエストラジオール)を含有するピルは、ほとんどの場合ニキビを改善します(まれに悪化の報告もありますが)。
日本で販売されているピルはすべてEEを含みますので、ニキビの改善が期待できます。
ただ、ニキビが改善するのに、数週間~数か月間服用する必要がある場合が普通です。
ニキビが炎症性であっても、非炎症性であっても、どちらもピルで改善が期待できます。
米国FDAは公式に4つのピルを中等度のニキビの治療薬として承認しています。
①エストロステップ
3相性ピルでノルエチステロン1mgを含みます。EEが20→30→35と変化します。
日本では販売されていません。類似品は、シンフェーズ、ルナベル、フリウェルです。
②オルトトリシクレン
3相性ピルでノルゲスチメートを含みます。日本では販売されていません。
類似品もありません。
③ヤーズ
EE+ドロスピレノンの配合錠です。日本でも販売されています。
④ベヤーズ
ヤーズにカルシウムが加えられた配合錠です。
日本では販売されていません。
黄体ホルモンの種類による特徴
デソゲストレルを含むピル(マーベロン、ファボワール)は、かつて美しくなるピルともてはやされた時期があります。
男性ホルモン作用が少ないことでこのピルを好む人がいるかも知れません。
血栓リスクは高めです。
利尿薬スピロノラクトン誘導体であるドロスピレノンを含むピル(ヤーズ、ヤーズフレックス、ドロエチ)は、ニキビの改善やPMSに対する効果が期待できます。男性ホルモン作用も少ないピルです。血栓リスクは高めです。
男性ホルモンのテストステロンに由来するレボノルゲストレルを含むピル(アンジュ、トリキュラー、ラベルフィーユ、ジェミーナ)は、比較的血栓の副作用リスクが低いと考えられています。避妊効果も優れており、以前から第一選択のピルとして用いられています。男性ホルモン作用は強めです。
また、レボノルゲストレルは緊急避妊ピルとして米国で圧倒的な売り上げを誇るプランBモーニングアフターピルや本邦のノルレボ錠の成分そのものです。
ノルエチステロンは、男性ホルモンのテストステロンに由来し、ノルエチステロンを含むピル(シンフェーズ、ルナベル、フリウェル)は標準的な男性ホルモン作用を有しています。まれに多毛やニキビ、体重増加をもたらす場合がありますが、そのようなことが起こった時には、男性ホルモン活性の低いピルに変更するとよい場合があります。
男性ホルモンのテストステロンに由来するノルゲストレルを含むピル(プラノバール)もやはり、多毛やにきび、体重増加などのアンドロゲン作用を経験する可能性があります。
参考
「ピルとストレスホルモン」
「妊娠と精神薬(妊娠中の薬の安全性)」
「ピルはPMSのうつ症状に効果が無い」
「女性と不安」
「ジェミーナと避妊・ニキビ・性欲」
まずピル一般について見ておきます。
経口避妊薬ピルは、合成卵胞ホルモン(合成エストロゲン)と合成黄体ホルモン(合成プロゲスチン)の2つの成分からなります。
合成黄体ホルモン(プロゲスチン)だけのピルをミニピルと言いますが、ミニピルは通常のピルに比べてやや避妊効果が劣ります。
卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2つのホルモンのうち、妊娠の阻止を担っているのは黄体ホルモンです。卵胞ホルモンは月経出血の制御に関わっています。
通常の自然妊娠経過で、妊娠成立後に黄体が妊娠黄体となり、妊娠の維持に働くとともにその後の受精を阻止することを考えれば理解しやすいと思います。
黄体ホルモンによる避妊の主な作用機序は、卵胞の発育を阻害することによる排卵の阻止です。
少し細かく見ますと、黄体ホルモンは視床下部に働きかけて、ゴナドトロピン放出ホルモンの分泌を減少させます。 これによって、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌が減少します。FSHの減少により卵胞の発育は遅くなり、卵胞ホルモンの上昇も少なくなります。卵胞ホルモンによるポジティブフィードバックの減少と、黄体ホルモンによるネガティブフィードバックという2重の効果で、周期半ばに起こるべきLHの急増(LHサージといいます)が起こりません。 卵胞の発育がなく、排卵を起こすLHサージがない状態では、排卵は起こりません。
黄体ホルモンはまた、子宮頸管粘液の粘度と白血球の含有量を増加させ、厚く、白く、不透明で粘り気のあるものにして、精子の子宮内侵入を阻止します。
子宮頸管粘液の変化は服用早期に起こりますので、ミニピル服用開始当初の避妊効果の多くは、この作用によって担われます。
避妊効果を測る指標として、パール・インデックスがあります。これは、100人の女性がいるとして、1年間でそのうち何人が妊娠したかを示すものです。
ピルを合成エストロゲン量で分けてパール・インデックスを見ると、20μgで0.79、30~35μgで0.13~1.3、50μgで0.08~0.88となっており、超低用量から中用量までの、どのピルを使ってもほとんど差はありません。
パール・インデックス
(100人のうち1年で妊娠した人数)
避妊法 | 理想的使用~一般的使用 |
避妊せず | 85~85 |
卵管結紮術 | 0.2~0.4 |
ピル | 0.1~3 |
ミニピル | 0.5~3 |
IUD銅(リング) | 0.8~3 |
コンドーム | 2~12 |
(参考:日本母性保護産婦人科医会監訳「経口避妊薬服用女性の管理」)
ピルの種類
ピルは、含まれる卵胞ホルモン(EE)の量によって高用量ピル、中用量ピル、低用量ピル、超低用量ピルに分かれます。
種類 | エチニルエストラジオール量 | 備考 |
高用量ピル | 50μg超 | |
中用量ピル | 50μg | |
低用量ピル | 50μg未満 | LEP (low dose estrogen progestin) |
超低用量ピル | 20μg以下 | Ultra-low-dose pills |
(参考:日産婦ガイドライン、webmd.com)
アメリカにピルが登場した1960年代には、150μgのエストロゲンが含まれていたと言いますから、様変わりです。
ピルは、含まれる黄体ホルモンの種類によって、第1世代~第4世代に分かれます。
第一世代ピル
第一世代プロゲスチンである、ノルエチノドレル、ノルエチンドロン、リネストレノール、エチレンジオールジアセテート、ノルエチステロンが含まれています。
本邦での発売品では、ノルエチステロン(NET)を含む、シンフェーズ、ルナベル、フリウェルなどです。
第二世代ピル
第二世代プロゲスチンである、レボノルゲストレル、ノルゲストレルを含んでおり、現在も多く処方されています。
本邦での発売品では、レボノルゲストレル(LNG)を含むトリキュラー、ラベルフィーユ、アンジュ、ジェミーナなどです。
第三世代のピル
第三世代プロゲスチンである、ノルゲスチメイト、デソゲストレル、ゲストデン、酢酸シプロテロンなどを含みます。
本邦での発売品では、デソゲストレル(DSG)を含むマーベロン、ファボワールなどです。
第四世代ピル
第四世代プロゲスチンである、ドロスピレノン、酢酸ノメゲストロール、ジエノゲストなどを含みます。
本邦での発売品では、ドロスピレノン(DSPR)を含むヤーズ(および、ヤーズフレックス)です。
服用に際しての注意
ピルは、毎日ほぼ同じ時間帯に服用します。
24時間以上間隔をあけて服用することは避けてください。
服用を開始してから7日間は、妊娠を防ぐことはできませんので、この期間中は別の避妊方法を併用してください。
飲み忘れた場合は、思い出したらすぐに飲み忘れた錠剤を服用し、次の錠剤を通常の時間に服用してください(場合により1日に2錠の服用になります)。
周期の1週目または2週目に、2回続けて飲み忘れた場合は、思い出した日に2錠、その翌日にも2錠を服用し、その後は1日1錠ずつにして再開します。新しい周期が始まるまでは、別の避妊方法を併用してください。
副作用
ピルの副作用のほとんどは軽度で、継続して服用しているうちに消失するか、別のピルに切り替えると消失します。
最も一般的な副作用は、周期途中の出血です(破綻出血)。 多くは点状や少量の出血で、生理の開始や最後に見られる少量の出血に似ています。
そのほかの副作用には、吐き気、頭痛、下腹部痛、乳房の圧痛、膣分泌物の増加、性欲の低下などがあります。
吐き気は、就寝前にピルを服用することで回避出来る場合があります。
一度に多くの錠剤を服用した場合には、激しい頭痛、吐き気、嘔吐が起こる可能性が高いと思います。特別な解毒剤はありませんので、制吐剤と鎮痛剤で症状を治療します。
重大な副作用として血栓症があります。また、最近ピル服用とうつ病・自殺の増加が報告されています。これについては項を改めて記載します。
ピルを服用できない人(禁忌)
ピルには絶対的な禁忌と相対的な禁忌がいくつかあります。
高血圧がコントロールされていない女性は、高血圧が管理されるまでピルの使用を開始すべきではありません。
35歳以上の喫煙者にピルは禁忌とされています。心血管イベント、深部静脈血栓塞栓症のリスクが高いためです。(本邦では35歳以上で1日15本以上の喫煙者)
静脈血栓塞栓症の既往歴、既知の虚血性心疾患、閃輝暗点(オーラ)を伴う片頭痛、乳がんや子宮内膜がん、心臓弁膜症の活動中または既往歴のある女性は、ピルを使用すべきではありません。
モーニング・アフターピル(緊急避妊ピル)について
本邦では、米国のようにOTC(市販薬)として購入できる製品はありません。ドラッグストアやアマゾンで緊急避妊ピルが購入できる米国が、うらやましいと感じる方は多いのではないでしょうか。
本邦で使われている緊急避妊ピル
プラノバール(適応外使用):性交後72時間以内に2錠、その12時間後に2錠を服用する。
いわゆるYuzpe(ヤツぺ)法と言うものですが、思いのほか悪心嘔吐が多く、せっかく服用したのに吐いてしまった、もう薬がない、などという状況が起こることがあります。
日産婦の指針では、他の緊急避妊法が利用できない場合においてのみ使用するとされています。
また、他の避妊法に比べて、効果は低いようです。
ノルレボ゙®錠1.5mg:
レボノルゲストレル錠1.5mg「F」®:
性交後72時間以内に1.5mg(1錠)を1回経口服用します。
上記2製剤が現在本邦で使用可能です。緊急避妊を適応とする薬で、成分はジェミーナにも含まれるレボノルゲストレル(LNG)です。
日産婦の指針では、緊急避妊の第一選択とされています。また、米国のプランB(Plan B morning after pill)も、内容的には同一のものです。
米国の状況
米国では、レボノルゲストレルとウリプリスタルを用いた緊急避妊が中心です。本邦のノルレボ(0.75)2Tに相当するプランBワンステップは、処方箋なしで薬局で購入できます。価格は、先発品であるプランBワンステップが43ドル程度(5000円弱)、ジェネリックのレボノルゲストレル錠は28ドル程度(3000円強)のようです。
ウリプリスタル(ウリプリスタル酢酸エステル)は、本邦未発売の選択的プロゲステロン受容体調節薬(SPRM)で、本邦では子宮筋腫治療薬としてあすか製薬が治験中とのことです。
ウリプリスタルは、2010年に米国FDAによって緊急避妊薬として承認され、Ella(エラ)の商品名で販売されました。添付文書によれば、性交後5日(120時間)まで服用可能ですが、最初の24時間以内が最も効果的とされています。また、エラを入手するには、医師の処方箋が必要です。効果はレボノルゲストレルよりも高いと報告されています。
米国では、プランBやエラといった「緊急避妊薬」の使用が飛躍的に増加しています。15~44歳の女性の使用率は、2002年の2%から2011~2013年には18%に増加しています。
レボノルゲストレルLNG(Plan B One-Step®)とウリプリスタルUPA(EllaOne®/Ella®)の緊急避妊効果比較
両者を比較した試験における妊娠率は、UPA 1.8%、LNG 2.6%と報告されています。
また、性交後72時間以上120時間以内の緊急避妊効果をみた試験では、LNG使用者106人のうち3人が妊娠したのに対して、UPAを使用した97人で妊娠したのは0人でした。
ビルとうつ、自殺
ピルとうつ
ピルとうつの関連を調べた研究では、ピルの使用者は非使用者と比べて、抗うつ薬の使用や、うつ病と診断される割合が約1.23倍高かったと言うものがあります(Skovlund)。
研究は、デンマークの処方登録システムを用いた大規模なもので、100万人以上の女性が対象となっています。
リスクは、若年女性で最も高く(15~19歳で1.8倍)、年齢が上がるとともに減少しました。
著者らは、
「ピルの使用は、特に青年期には、その後の抗うつ薬の使用やうつ病の診断と関連しており、ピルの潜在的な副作用としてうつ病の存在が示唆された。」と結論づけています。
実際の臨床でも、ピルの使用で気分が落ち込むという経験を聞くことは少なくありません。
ピルでうつ症状を呈するリスクは、小さいながらも現実に起こりえることかも知れません。
ピルと自殺の関係
2018年、アメリカ精神医学会誌(1)に、ピルの使用は自殺企図のリスクを2倍にし、自殺既遂のリスクを3倍にするという論文が掲載されました(Skovlund)。
これは上の「ピルとうつ」で示したのと同じ研究グループによるもので、デンマークの国内処方登録システムを用いて行われています。
対象は47万5802人の女性で、平均追跡期間は8.3年でした。対象者の内、ピルを使用した女性は54%いました。
結果は、統計的に有意であるだけでなく、ピルが及ぼす影響の強さも相当大きなものでした。
うつの相対リスクが1.23から2.0の範囲にあったのに対して、自殺未遂の相対リスクは1.91から3.28の範囲にありました。
これだけを見れば、うつに関する報告が過少になされている可能性も考える必要があります。
自殺に対する影響は、うつの場合と同様に若年女性に強く出ています。
思春期の女性は年配の女性より、初回の自殺未遂に関して、ピルの影響をより受けやすかったと報告されています。
量に関しては、エチニルエストラジオールの量が50㎍のピルや、黄体ホルモンだけのピルを使った人で自殺行動のリスクより高く見られました。
自殺企図のピークは、ピル使用の2か月後でしたが、ピルの使用を中止しても、数年間はリスクの高い状態が続きました。
この研究は、ピルの使用が、自殺行動に先行していることを明確に示しましたが、ピルと自殺行動の関係に影響を及ぼす他の因子については情報が不足しています。
(研究からは、過去に自殺企図のあった女性、精神疾患既往歴のある女性、抗うつ薬を処方された女性などは、除外されていますが)
予期せぬ妊娠が女性に及ぼす影響の大きさを考慮すれば、この研究だけを理由に、現在避妊にピルを用いている人が、服用を中止するのは慎重であるべきです。
ただし、女性のうち一部の人は、ピルによって精神状態に影響を受けやすいと想定されます。
影響を受けやすい女性が誰なのかは分かりませんので、ピルを使用している女性は、少なくとも自分の気分を注意深く監視する必要があると思います。
場合によっては、このほとんど認識されていない潜在的「副作用」によって、自分の生命が脅かされるという深刻な事態になり得るからです。
一部の女性が血栓や乳がんのリスクに留意する必要があるのと同様です。
(1)The American Journal of Psychiatry:アメリカ精神医学会(APA)の公式雑誌。
以下は、ジェミーナとヤーズについて、IFなどを参考に概略を記載しました。
ジェミーナ
ジェミーナによる体重増加は2%と報告されていますが、一般には殆ど心配する必要はありません。ジェミーナで体重が減ったという報告もあります。
ジェミーナを中止する理由で多いのは、頭痛と不正子宮出血であると思われます。また、吐き気も重要な副作用です。
ピルの重大な副作用である、静脈血栓塞栓症のリスクは、ジェミーナを含む第二世代ピルで低いと報告されています。
ジェミーナの副作用として、ニキビが0.4%報告されていますが、一般にはジェミーナの服用はニキビの減少をもたらすと考えられます。
ジェミーナはPMS/PMDDに有効なのか?
EE0.02mg・LNG0.09mgのピル(=ジェミーナ)を調査した研究では、まちまちな結果が報告されたため、PMS/PMDDに対する有効性は確認されませんでした。
ただし、4周期(28日x4=112日)服用した女性について調べたある研究では、対象となった女性の52%が、4周期目の黄体期後期に相当する時期に症状の有意な改善があったと報告されています。
改善した症状には、抑うつ、怒り、過敏性、乳房の緊張などの身体的症状が含まれていました。(Halbreich U)
ジェミーナ配合錠(Jemina tablets)
1錠中に、レボノルゲストレル 0.09 mg 及びエチニルエストラジオール)0.02 mg を含有します。
Levonorgestrel Ethinylestradiol
製造販売元:ノーベルファーマ(提携:あすか製薬)
効能又は効果:月経困難症
用法及び用量
ジェミーナ配合錠は周期投与と連続投与の 2 通りの投与方法が選択できます
周期投与:1 日 1 錠を毎日一定の時刻に 21 日間連続経口投与し、その後 7 日間休薬する。以上 28 日間を1 周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29 日目から次の周期を開始し、以後同様に繰り返す。
連続投与:1 日 1 錠を毎日一定の時刻に 77 日間連続経口投与し、その後 7 日間休薬する。以上 84 日間を1 周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、85 日目から次の周期を開始し、以後同様に繰り返す。
初めて服用する場合は、原則として月経第 1~5 日目に服用を開始します。
万一前日の飲み忘れに気付いた場合は、直ちに前日の飲み忘れた錠剤を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用します。
2 日以上服薬を忘れた場合は、気付いた時点で前日分の 1 錠を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用し、その後は当初の服薬スケジュールとおり服用を継続します。
禁忌(服用できない人)
1 本剤の成分に対し過敏性素因のある患者
2 エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば乳癌、子宮内膜癌)、子宮頸癌及びその疑いのある患者
3 診断の確定していない異常性器出血のある患者
4 血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患又はその既往歴のある患者
5 35 歳以上で 1 日 15 本以上の喫煙者
6 前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛の患者
[前兆を伴う片頭痛の患者は前兆を伴わない患者に比べ脳血管障害(脳卒中等)が発生しやすくなるとの報告がある。]
7 肺高血圧症又は心房細動を合併する心臓弁膜症の患者、亜急性細菌性心内膜炎の既往歴のある心臓弁膜症の患者
8 血管病変を伴う糖尿病患者(糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)
9 血栓性素因のある患者
10 抗リン脂質抗体症候群の患者
11 手術前 4 週以内、術後 2 週以内、産後 4 週以内及び長期間安静状態の患者
12 重篤な肝障害のある患者
13 肝腫瘍のある患者[米国経口避妊薬添付文書ガイダンスでは、肝腺腫又は肝癌は禁忌とされている。また、長期投与により、良性肝腫瘍及び悪性肝腫瘍のリスクが上昇したとの報告もある。]
14 脂質代謝異常のある患者
15 高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)
16 耳硬化症の患者
17 妊娠中に黄疸、持続性そう痒症又は妊娠ヘルペスの既往歴のある患者
18 妊婦又は妊娠している可能性のある患者
19 授乳婦
20 骨成長が終了していない可能性がある患者[骨端の早期閉鎖を来すおそれがある。]
重要な基本的注意
1 本剤を避妊目的で使用しないこと。
2 本剤の服用により、年齢、喫煙、肥満、家族歴等のリスク因子の有無にかかわらず血栓症があらわれることがあるので、次のような症状があらわれた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
緊急対応を要する血栓症の主な症状
下肢の急激な疼痛・腫張、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、四肢の脱力・麻痺、構語障害、急性視力障害等
患者に対しても、このような症状があらわれた場合は、直ちに服用を中止し、救急医療機関を受診するよう説明すること。
3 本剤の服用中に、血栓症が疑われる症状があらわれた場合は、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
血栓症が疑われる症状
下肢の疼痛・腫脹・しびれ・発赤・熱感、頭痛、嘔気・嘔吐等
4 血栓症のリスクが高まる状態(体を動かせない状態、顕著な血圧上昇、脱水等)が認められる場合は、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
5 患者には、投与開始時及び継続時に以下について説明すること。
・血栓症は生命に関わる経過をたどることがあること。
・血栓症が疑われる症状があらわれた場合や、血栓症のリスクが高まる状態になった場合は、症状・状態が軽度であっても直ちに服用を中止し医師等に相談すること。
・血栓症を疑って他の医療機関を受診する際は、本剤の使用を医師に告知し、本剤による血栓症を念頭においた診察を受けられるようにすること。
6 本剤服用中にやむを得ず手術が必要と判断される場合には、血栓症の予防に十分配慮すること。
7 年齢及び喫煙量により心血管系の重篤な副作用の危険性が増大するとの報告があるので、本剤服用患者には禁煙するよう指導すること。8 本剤の投与に際しては、患者の病歴調査及び検診が必要である。この検診には、血圧測定、乳房・腹部の検査及び臨床検査が含まれる。本剤投与中は 6 ヵ月毎の検診を行い、1 年に 1 回以上、子宮・卵巣を中心とした骨盤内臓器の検査を行うこと。また、1 年に 1 回、子
宮頸部の細胞診の実施を考慮すること。
9 乳癌の検査は、患者に自己検診を行うよう指導すること。
10 本剤投与中の器質的疾患を伴う月経困難症患者では、不正性器出血の発現に注意するとともに定期的に内診及び超音波検査等を実施して、器質的疾患の増悪の有無を確認すること。特に、子宮内膜症性卵巣嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞)は、自然経過において悪性化することを示唆する報告があるので、画像診断や腫瘍マーカー等の検査も行うこと。本剤投与中に腫瘤が増大するなど器質的疾患の増悪が認められる場合は、他の治療法も勘案したうえで投与継続の可否を判断すること。
11 本剤投与中は経過を十分に観察し、期待する効果が得られない場合には漫然と投与を継続せず、他の適切な治療を考慮すること。
12 服用中に不正性器出血が長期間持続する場合は、腟細胞診等の検査で悪性疾患によるものではないことを確認の上、投与すること。
13 本剤投与により希発月経等の月経異常や不正性器出血がみられる。患者にはあらかじめ十分に説明し、通常の月経に比べて出血量が多く持続日数が長い場合あるいは月経の発来がない場合には、医師へ相談するよう指導すること。出血が続く患者には必要に応じて血液検査等を実施し、異常が認められた場合には鉄剤の投与又は本剤の投与中止など適切な処置を行うこと。
14 服用中に激しい下痢、嘔吐が続いた場合には本剤の吸収不良をきたすことがあり、妊娠する可能性が高くなるので注意すること。
15 本剤は黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合剤であることから、黄体ホルモン又は卵胞ホルモンを含有する薬剤(経口避妊薬等)を使用している場合は、本剤の投与開始前に中止させること。また、本剤投与中にこれらの薬剤を使用しないよう患者に指導すること。
特定の背景を有する患者に関する注意
1 合併症・既往歴等のある患者
1.1 子宮筋腫のある患者
定期的に内診や画像診断等の検査を行うなど慎重に投与すること。筋腫の腫大を促すことがある。
1.2 40 歳以上の患者(ただし、1 日 15 本以上の喫煙者には投与しないこと)
一般に心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなる年代であるため、これを助長するおそれがある。
1.3 乳癌の既往歴のある患者
乳癌が再発するおそれがある。
1.5 喫煙者(ただし、35 歳以上で 1 日 15 本以上の喫煙者には投与しないこと)
心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。1.6 肥満の患者
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。
1.7 血栓症の家族歴を持つ患者
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。
1.8 前兆を伴わない片頭痛の患者
脳血管障害(脳卒中等)が発生しやすくなるとの報告がある。
1.9 心臓弁膜症の患者(ただし、肺高血圧症又は心房細動を合併する心臓弁膜症の患者、亜急性細菌性心内膜炎の既往歴のある心臓弁膜症の患者には投与しないこと)
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。
1.10 軽度の高血圧(妊娠中の高血圧の既往も含む)のある患者
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。また、症状が増悪することがある。
1.11 耐糖能の低下している患者(糖尿病患者及び耐糖能異常の患者)
十分コントロールを行いながら投与すること。耐糖能が低下することがある。
1.12 ポルフィリン症の患者
症状が増悪することがある。
9.1.13 心疾患又はその既往歴のある患者
ナトリウム又は体液の貯留により症状が増悪することがある。
1.14 てんかん患者
症状が増悪することがある。
1.15 テタニーのある患者
症状が増悪することがある。
2 腎機能障害患者
2.1 腎疾患又はその既往歴のある患者
ナトリウム又は体液の貯留により症状が増悪することがある。
3 肝機能障害患者
3.1 重篤な肝障害のある患者
投与しないこと。代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある。
3.2 肝障害のある患者(重篤な肝障害の患者を除く)
代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある。
4 生殖能を有する者
4.1 本剤の投与に際しては、問診、内診、基礎体温の測定、免疫学的妊娠診断等により、妊娠していないことを十分に確認すること。
4.2 本剤の服用方法を遵守していない場合等何等かの理由により妊娠の可能性が疑われる場合は、医師に相談するよう指導し、妊娠の有無について確認すること。
4.3 妊娠を希望する場合には、本剤の服用を中止後に月経周期が回復するまで避妊させることが望ましい。
4.4 本剤を服用中に消退出血が 2 周期連続して発来しなかった場合、投与継続に先だって妊娠していないことを確認すること。
5 妊婦
5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。妊娠が確認された場合には投与を中止すること。
5.2 卵胞ホルモン剤を妊娠動物(マウス)に投与した場合、児の成長後腟上皮及び子宮内膜の悪性変性を示唆する結果が報告されている。また、新生児(マウス)に投与した場合、児の成長後腟上皮の悪性変性を認めたとの報告がある。
6 授乳婦
授乳を避けさせること。母乳の量的質的低下が起こることがある。また、母乳中への移行、
児において黄疸、乳房腫大が起こるとの報告がある。
7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
(8)高齢者:設定されていない
相互作用
併用禁忌:設定されていない
重大な副作用と初期症状
重大な副作用: 血栓症(四肢、肺、心、脳、網膜等)(頻度不明)
下肢の急激な疼痛・腫脹、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、四肢の脱力・麻痺、構語障害、急性視力障害等の症状があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用(%)
不正子宮出血(77.6)
希発月経(48.1)
月経過多(23.7)
下腹部痛(20.3)
無月経(11.6)
悪心(10.0)
頭痛(8.3)
過少月経(3.7)
ヘモグロビン減少(3.3)
血中鉄減少(2.9)
ヘマトクリット減少(2.5)
体重増加(2.1)
乳房不快感(2.1)
鉄欠乏性貧血(2.1)
嘔吐(1.7)
背部痛(1.7)
上腹部痛(1.7)
便秘(1.7)
倦怠感(1.7)
卵巣嚢胞(1.2)
貧血(1.2)
動悸(1.2)
腹痛(1.2)
γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加(1.2)
(以上、インタビューフォーム等を参考に致しました)
ヤーズ
避妊のためにピルを使用することを選択した場合、月経前不快気分障害(PMDD)の治療のためにヤーズを服用することもできます。(FDA添付文書)
避妊のためにピルを使用すると決めていない限り、月経前不快気分障害(PMDD)の治療のためにヤーズを始めるべきではありません。(FDA添付文書)
PMDDの治療には、次の場合にのみヤーズを使用してください。避妊のためにピルを使うことを決めている、および 医療従事者によってPMDDと診断されたことがある。
ヤーズは、月経前症候群(PMS)の治療には有効であることが示されていません。(FDA添付文書)
PMSでは、妊娠を予防したい場合にのみ、ヤーズを服用してください。(FDA添付文書)
PMDDに対するヤーズの有効性は、3周期以上の月経周期では評価されていません。(FDA添付文書)
ヤーズは、14歳以上で月経が開始した女性の、中等度の尋常性にきびの治療に適応があります。 避妊のためにピルを希望する場合にのみ使用してください。(FDA添付文書)
以下では、日本であまり報道されていない、ヤーズの訴訟関連の情報を紹介いたします。
米国FDAは、過去複数回にわたりヤーズなどドロスピレノン含有ピルに対する警告を発しています。
FDAが調査に用いた資料によれば、深部静脈血栓、肺塞栓、脳卒中、心臓発作といった血栓による副作用リスクが、他のピルに比べてヤーズなどドロスピレノンを含むピルで高いことがわかりました。
FDAには、ドロスピレノン含有ピルを服用していた女性50人以上の死亡が報告されていると言われます。
米国では、ヤーズに関連する深刻な副作用として、死亡、心臓発作、心不整脈、脳卒中、肺塞栓症、腎不全、胆のう炎と胆のう切除、血栓、深部静脈血栓症などが挙げられています。
ヤーズの製造販売元バイエル薬品は、これらの副作用が若い女性に発生することは非常にまれであると述べています。しかし、米国では何千人もの女性とその家族が、これらの深刻な合併症に関連する1万件以上の訴訟を起こしました。
2011年10月24日に FDAが発表した研究結果によれば、ヤーズを服用している女性は、ヤーズ以前のピルを服用している女性よりも、血栓を起こす可能性が75%高いことがわかりました。これは、800,000人以上の女性を対象とした6年間の研究です。
また、有名な英国医学誌(BMJ)には、ドロスピレノン含有ピル(ヤーズなど)は、レボノルゲストレル含有ピルと比較して、特発性静脈血栓塞栓症のリスクが3倍高いと報告されました。
Risk of venous thromboembolism in users of oral contraceptives containing drospirenone or levonorgestrel: nested case-control study based on UK General Practice Research Database
さらにBMJに、生殖年齢にある120万人のデンマーク人女性を対象とした研究が発表されましたが、ヤーズ使用者は、レボノルゲストレル(LNG)含有ピルの使用者と比べて、少なくとも2倍の静脈血栓塞栓症のリスクがあることが報告されました。
Risk of venous thromboembolism from use of oral contraceptives containing different progestogens and oestrogen doses: Danish cohort study, 2001-9
以下はFDAが発した警告です。
FDAはバイエル薬品に対して、ヤスミンのテレビコマーシャルを修正するように警告。コマーシャルが有効性を誇張し、リスクが少ないと誤解を招く点について。(2003年7月10日)
(ヤスミン:エチニルエストラジオール0.02mg、ドロスピレノン3mg、プラセボ7日分)
FDAはバイエル薬品に対して、ヤーズのテレビコマーシャルを修正するように警告。コマーシャルが有効性を誇張し、リスクが少ないと誤解を招く点について。(2008年10月3日)
(ヤーズ:エチニルエストラジオール0.02mg、ドロスピレノン3mg、プラセボ4日分)
FDAはバイエル薬品に対して、ヤーズのネット広告を修正するように警告。広告が有効性を誇張し、リスクが少ないと誤解させ、FDAが承認していない条件での使用を示唆する点について。(2009年3月26日)
FDAは、ドロスピレノン含有経口避妊薬で血栓リスクが増加する可能性があると、安全上の警告を発行。(2011年5月31日)
FDAは、ドロスピレノン含有経口避妊薬における血栓リスクについての更新情報を追加し、添付文書に新しい情報を追加することを要求。(2012年4月10日)
2012年4月10日の警告でFDAは、ヤーズに含まれるプロゲスチンのドロスピレノンが、血栓のリスクを高める可能性があるとしています。
ヤーズ配合錠(一般的名称:ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠)
製造販売元:バイエル薬品株式会社
YAZ
Drospirenone Ethinylestradiol Betadex
効能又は効果:月経困難症
用法及び用量
1日1錠を毎日一定の時刻に定められた順に従って(淡赤色錠から開始する)28日間連続して服用します。以上28日間を投与1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。
用法及び用量に関連する注意
毎日一定の時刻に服用します。
本剤を初めて服用する場合は、月経第1日目から服用を開始します。
服用開始日が月経第1日目から遅れた場合は、妊娠のリスクを考慮し、飲みはじめの最初の1週間はホルモン剤以外の避妊法を用います。
万一前日の飲み忘れに気付いた場合は、直ちに前日の飲み忘れた錠剤を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用します。
2日以上服薬を忘れた場合は、気付いた時点で前日分の1錠を服用し、当日の錠剤も通常の服薬時刻に服用し、その後は当初の服薬スケジュールどおり服用を継続します。
食事の影響
食事摂取の有無にかかわらず服用可能であると考えられています。
禁忌(次の人は服用できません)
1 本剤の成分に対し過敏性素因のある患者
2 エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば、乳癌、子宮内膜癌)、子宮頸癌及びその疑いのある患者
3 診断の確定していない異常性器出血のある患者
4 血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患又はその既往歴のある患者
5 35歳以上で1日15本以上の喫煙者
6 前兆(閃輝暗点、星型閃光等)を伴う片頭痛の患者
7 肺高血圧症又は心房細動を合併する心臓弁膜症の患者、亜急性細菌性心内膜炎の既往歴のある心臓弁膜症の患者
8 血管病変を伴う糖尿病患者(糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)
9 血栓性素因のある患者
10 抗リン脂質抗体症候群の患者
11 手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内及び長期間安静状態の患者
12 重篤な肝障害のある患者
13 肝腫瘍のある患者[米国経口避妊剤添付文書ガイダンス案(2004年改訂版)では、肝腺腫又は肝癌は禁忌とされている。長期投与により、良性肝腫瘍及び悪性肝腫瘍のリスクが上昇したとの報告がある。]
14 脂質代謝異常のある患者
15 高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)
16 耳硬化症の患者
17 妊娠中に黄疸、持続性そう痒症又は妊娠ヘルペスの既往歴のある患者
18 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
19 授乳婦
20 骨成長が終了していない可能性がある患者[骨端の早期閉鎖を来すおそれがある。]
21 重篤な腎障害又は急性腎障害のある患者
重要な基本的注意とその理由
1 本剤を避妊目的で使用しないこと。日本人における避妊目的での有効性及び安全性は確認されていない。
2 本剤の服用により、年齢、喫煙、肥満、家族歴等のリスク因子の有無にかかわらず血栓症があらわれることがあるので、血栓症が疑われる症状があらわれた場合は、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
血栓症が疑われる症状
下肢の疼痛・腫脹・しびれ・発赤・熱感、頭痛、嘔気・嘔吐等
3 血栓症のリスクが高まる状態(体を動かせない状態、顕著な血圧上昇、脱水等)が認められる場合は、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
4 本剤服用患者には、投与開始時及び継続時に以下について説明すること。
・血栓症は生命に関わる経過をたどることがあること。
・血栓症が疑われる症状があらわれた場合や、血栓症のリスクが高まる状態になった場合は、症状・状態が軽度であっても直ちに服用を中止し医師等に相談すること。
・血栓症を疑って他の医療機関を受診する際は、本剤の使用を医師に告知し、本剤による血栓症を念頭においた診察を受けられるようにすること。
5 本剤服用中にやむを得ず手術が必要と判断される場合には、血栓症の予防に十分配慮すること。
6 年齢及び喫煙量により心血管系の重篤な副作用の危険性が増大するとの報告がある。従って、本剤服用患者には禁煙するよう指導すること。
7 本剤の投与にあたっては患者の病歴調査及び検診が必要である。この検診には、血圧測定、乳房・腹部の検査及び臨床検査が含まれる。本剤投与中は6ヵ月ごとの検診を行い、1年に1回以上、子宮・卵巣を中心とした骨盤内臓器の検査を行うこと。また、1年に1回、子宮頸部の細胞診の実施を考慮すること。
8 器質的疾患を伴う月経困難症患者に対する本剤の投与にあたっては、器質的疾患の増悪の有無を確認するため、不正性器出血の発現に注意し、定期的に内診及び超音波検査等による診察を行うこと。本剤投与中に腫瘤が増大するなど器質的疾患の増悪が認められる場合や、臨床症状の改善がみられない場合は、他の治療法も勘案したうえで投与継続の判断を行うこと。特に、子宮内膜症性卵巣のう胞(卵巣チョコレートのう胞)は、頻度は低いものの自然経過において悪性化を示唆する報告があるので、画像診断や腫瘍マーカー等の検査も行うこと。
9 本剤投与中は経過を十分に観察し、期待する効果が得られない場合には漫然と投与を継続せず、他の適切な治療を考慮すること。
10 乳癌の検査は、患者に自己検診を行うよう指導すること。
11 服用中に不正性器出血が発現した場合、通常は投与継続中に消失するが、長期間持続する場合は、腟細胞診等の検査で悪性疾患によるものではないことを確認の上、投与すること。
12 服用中に激しい下痢、嘔吐が続いた場合には本剤の吸収不良を来すことがあり、不正性器出血の発現の可能性及び妊娠のリスクが高くなるので注意すること。
13 本剤投与により希発月経等の月経異常や不正性器出血がみられる。患者にはあらかじめ十分に説明し、通常の月経に比べて出血量が多く持続日数が長い場合あるいは月経の発来がない場合には、医師へ相談するよう指導すること。出血が続く患者には必要に応じて血液検査等を実施し、異常が認められた場合には鉄剤の投与又は本剤の投与中止など適切な処置を行うこと。
14 本剤は黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合剤であることから、黄体ホルモンまたは卵胞ホルモンを含有する薬剤(経口避妊剤等)を使用している場合は、本剤の投与開始前に中止させること。また、本剤投与中にこれらの薬剤を使用しないよう患者に指導すること。
特定の背景を有する患者に関する注意
1 合併症・既往歴等のある患者
1.1 子宮筋腫のある患者
定期的に内診や画像診断等の検査を行うなど慎重に投与すること。筋腫の腫大を促すことがある。
1.2 40歳以上の患者(ただし、1日15本以上の喫煙者には投与しないこと)
一般に心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなる年代であるため、これを助長するおそれがある。
1.3 乳癌の既往歴のある患者
乳癌が再発するおそれがある。
1.4 乳癌の家族歴又は乳房に結節のある患者
定期的に乳房検診を行うなど慎重に投与すること。エストロゲン投与と乳癌発生との因果関係についてその関連性を示唆する報告もある。
1.5 喫煙者(ただし、35歳以上で1日15本以上の喫煙者には投与しないこと)
心筋梗塞等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。1.6 肥満の患者
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。
1.7 血栓症の家族歴を持つ患者
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。
1.8 前兆を伴わない片頭痛の患者
脳血管障害(脳卒中等)が発生しやすくなるとの報告がある。
1.9 心臓弁膜症の患者(ただし、肺高血圧症又は心房細動を合併する心臓弁膜症の患者、亜急性細菌性心内膜炎の既往歴のある心臓弁膜症の患者には投与しないこと)
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。
1.10 軽度の高血圧(妊娠中の高血圧の既往も含む)のある患者
血栓症等の心血管系の障害が発生しやすくなるとの報告がある。また、症状が増悪することがある。
1.11 耐糖能の低下している患者(糖尿病患者及び耐糖能異常の患者)
十分コントロールを行いながら投与すること。耐糖能が低下することがある。
.1.12 ポルフィリン症の患者
症状が増悪することがある。
1.13 心疾患又はその既往歴のある患者
ナトリウム又は体液の貯留により症状が増悪することがある。
1.14 てんかん患者
症状が増悪することがある。
2 腎機能障害患者
2.1 重篤な腎障害又は急性腎障害のある患者
投与しないこと。ドロスピレノンの弱い抗ミネラルコルチコイド作用により、血漿中レニン及びアルドステロン活性が上昇することがある。
2.2 腎障害のある患者(重篤な腎障害又は急性腎障害のある患者を除く)
ドロスピレノンの弱い抗ミネラルコルチコイド作用により、血漿中レニン及びアルドステロン活性が上昇することがある。
3 肝機能障害患者
3.1 重篤な肝障害のある患者
投与しないこと。代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある。
3.2 肝障害のある患者(重篤な肝障害のある患者を除く)
代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある。
4 生殖能を有する者
4.1 本剤投与に際しては、問診、内診、基礎体温の測定、免疫学的妊娠診断等により、妊娠していないことを十分に確認すること。
4.2 服用中に消退出血が2周期連続して発来しなかった場合、投与継続に先だって妊娠していないことを確認すること。
4.3 妊娠を希望する場合には、本剤の服用を中止後、月経周期が回復するまで避妊させることが望ましい。
5 妊婦
5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。妊娠が確認された場合には投与を中止すること。
5.2 卵胞ホルモン剤を妊娠動物(マウス)に投与した場合、児の成長後腟上皮及び子宮内膜の悪性変性を示唆する結果が報告されている。
また、新生児(マウス)に投与した場合、児の成長後腟上皮の悪性変性を認めたとの報告がある。
6 授乳婦
投与しないこと。授乳中の患者には他の治療法をすすめるなど適切な指導をすること。母乳の量的質的低下が起こることがある。また、母乳中への移行、児において黄疸、乳房腫大が報告されている。
7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
(8)高齢者
設定されていない
併用禁忌とその理由
該当しない
重大な副作用と初期症状
血栓症(四肢、肺、心、脳、網膜等)(頻度不明)
下肢の急激な疼痛・腫脹、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、四肢の脱力・麻痺、構語障害、急性視力障害等の症状があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用(%)
頭痛(40.98)
悪心(29.76)
不正子宮出血(25.37)
凝固検査異常(20.24)
性器出血(19.51)
月経痛(18.78)
下腹部痛(11.22)
トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体上昇( 8.54)
トリグリセリド上昇( 5.37)
プラスミノーゲン上昇( 5.12)
乳房不快感( 4.15)
月経過多( 4.15)
嘔吐( 3.90)
倦怠感( 3.66)
腹部不快感( 2.93)
便秘( 2.93)
下痢( 2.93)
痤瘡( 2.93)
末梢性浮腫( 2.93)
プロテインS低下( 2.93)
機能性子宮出血( 2.44)
背部痛( 2.44)
傾眠( 2.20)
不眠症( 2.20)
乳房痛( 1.71)
浮動性めまい( 1.71)
胃炎( 1.71)
口内炎( 1.71)
湿疹( 1.71)
外陰部腟カンジダ症( 1.71)
鼻咽頭炎( 1.71)
乳腺線維腺腫( 1.71)
線維囊胞性乳腺疾患( 1.46)
無月経( 1.46)
感覚鈍麻( 1.46)
腹痛( 1.46)
上腹部痛( 1.46)
蕁麻疹( 1.46)
乳腺症( 1.22)
消退出血( 1.22)
色素沈着( 1.22)
胃腸炎( 1.22)
子宮平滑筋腫( 1.22)
回転性めまい( 1.22)
参考記事